SGRAメールマガジン バックナンバー

[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Whither the (Japanese) Casino Bill”

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SGRAかわらばん547号(2014年12月10日)

【1】エッセイ:謝 志海「カジノ法案のゆくえ」

【2】特別寄稿:奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その6)」

【3】第6回SGRAカフェへのお誘い(再送)
  「アラブ/イスラームをもっと知ろう」(12月20日東京)
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【1】SGRAエッセイ#440

■ 謝 志海「カジノ法案のゆくえ」

9月末に始まった国会は、開始早々から閣僚の相次ぐ辞任などにより、法案審議が遅
れた。その中で、遂に審議を断念した案件に統合型リゾート(IR)推進法案(カジノ
法案)がある。安倍首相も経済成長戦略の一環と考え、カジノを解禁にするかどう
か、またカジノを含む総合エンターテイメント施設の建設と整備を進めるか、この審
議については国会だけが盛り上がっていて、国民は冷ややか、もしくは興味を持って
いないという見方をしているメディアや有識者が多い。

日本にはすでに公営賭博(公営競技すなわち、競馬、競輪、競艇、オートレース)や
パチンコがさかんではないかというのが、日本在住の外国人ジャーナリストの視点
で、日本に暮らす外国人も同じ見解だろう。特に、パチンコ*パチスロは約20兆円産
業というのは有名な話だ。カジノ法案について議論する際、賛成派も反対派もこのす
でにある公営競技については触れず、統合型リゾートの建設は外国からの観光客を呼
び込める素晴らしい施設となり、日本国民の雇用も増えるなど、壮大だが具体性に欠
けた内容で、経済効果うんぬんと言われても日本国民にはカジノの必要性は伝わらな
いのかもしれない。

ではカジノ合法化において、地域振興や経済効果などを試算する経済学者たちはどう
予測しているかというと、カジノ収益は予測できても、ギャンブル依存症の程度、有
害性における社会的費用は試算が困難であるとしている。ここでも公営競技とカジノ
法案は切り離されている。日本には公営競技やパチンコの依存者がどのくらいいて、
どのような犠牲があるか統計サンプルが取れそうなものなのに。カジノ法案を巡って
は、カジノ利用に関し、シンガポールや韓国のように国民と観光客を区別するかどう
かも論点だが、すでにいるギャンブル好きの日本人がどの程度、カジノに流入するの
かさえも推計されていない。

日本政府としては一体どのようなカジノリゾートを目指しているのだろう?安倍首相
は今年シンガポールのカジノへ視察に行かれたそうだし、国会議員らもマリーナ*ベ
イ*サンズへ押し掛けているということは、その辺りを目指しているのか。しかし、
アジアにはすでにいくつものカジノリゾートがある。今更後追いしても日本にカジノ
目当ての観光客は来るのだろうか。少なくともアジアに今あるカジノとは差別化した
方が良い気がする。

もし日本が本気で持続可能なIRを目指すのなら、ハリウッド映画が参考になるかもし
れない。近年、ラスベガスが舞台の映画では、ラスベガスはもはやカジノの為の場所
として描かれていない。単に気晴らし、バカ騒ぎしに行く所という設定だ。現在のラ
スベガスはカジノ無しでも楽しめる仕組みが随所にちりばめられている。例えば、ラ
スベガスでしか観られない大物歌手のコンサートやショー。各ホテルは集客の為、部
屋のインテリア、ビュッフェの食事に工夫をこらし、全米や世界で話題のレストラン
も出店させる。ニューヨークやロサンゼルスで有名なナイトクラブも入っている。こ
れらのエンターテイメント目当てで来た人がカジノもちょっとしてみるかという流れ
になっている。コンベンション施設もしっかり整っているのでビジネスで来ている人
も多い。多様な目的の人が集まり、一大ショービジネスタウンとなっている。無論、
このようなオープンで安全なイメージを維持すべくラスベガスにはカジノ場だけでな
く至る所に監視カメラが設置されていて、おそらくアメリカ人はその存在に気付いて
いるから、無茶をしないのであるが。

日本にラスベガスを作ることを勧める訳では無いが、海外のカジノの好例、悪例を
もっともっと研究し、日本に合う持続可能なカジノ施設を含むIRを具体的に示し、何
より日本国民から同意を得られる施設を目指す事に注力すべきだ。国際観光業での経
済利益を狙うだけではIR実現そのものがギャンブルになってしまう。

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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい
る。
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【2】特別寄稿

SGRAエッセイ#441

■ 奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その6)」

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SGRAでは、会員の奇錦峰さんのエッセイ「中国の大学の現状」を2007年にかわらばん
で配信し、「われら地球市民」(ジャパンブック、2010年)に収録しましたが、2014
年8月にバリ島で開催した第2回アジア未来会議でさらなる報告がありましたので、数
回に分けてご紹介しています。
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次は小、中、高校の責任

今の大学生達の著しい人間性の欠如の理由の一つは、人間社会での共存能力がとても
低いことによると思われる。他の人とうまく交流できない。人間関係、つまり同級
生、同寮生、同校生との関係が希薄なことは、恐らく史上まれなことと思われる。

今の大学生達が大学に入る前の12年間の小、中、高校教育の段階では、面倒を見てく
れている両親や祖父祖母以外の他人と付き合うのは、たぶん講義中のクラスメートだ
けであり(例えば食事を一緒に作って食べるとか修学旅行など、講義以外の集団活動
は、中国の小、中、高校では殆どない)、本当の社会的な人付き合いということをま
だ知らないのだ。しかも唯一朝晩付き合ってきた親たちは世話、譲歩、溺愛……つま
り子供にサービスするだけなので、いわば王子様、王女様ばかりを育成してきた。
小、中、高校においては、このような人間で構成されたクラスを、責任を持って指導
しなければならないのだが、問題に気づきながらも教科書を教えることのみに力を尽
くす。責任を感じて躾をしようとした一部の教師は、生徒に罵倒され、殴られたり、
酷いことに殺されたりすることもあったのだ。

大学で寮生活を始めると、高校時代まで続いていた試験の圧力がなくなり、教師や父
母の監視からも遠く離れ、突然、彼らは人生の解放感を抱き、初めて束縛されない自
由の楽しさを謳歌できることを知るのだ。しかし彼らが分かっていないのは、これは
解放ではなく、大人になって自己コントロールが必要な人生が始まるということであ
る。ここを理解せず、無秩序に行動し始める。丁度この時期に、いろいろな誘惑(唯
物的な誘い、セクシュアリティ……)で溢れた現代社会の中に放り出され、彼らは人
間の動物的本能の力に勝つことが出来ず、本能のまま生きる。そのため、小、中、高
校の教育は子供に何を教えたのか?という疑問が生じる。この時期の教育は、生き残
ることばかりを教え、真面目な人間になることを教えなかったと言える。

大学の責任

中国の大学には問題がたくさんあるけれど、大学教育と関係のあることについて列挙
する。

1. 大学生募集の「大躍進」vs 学生の質の大暴落

4年間連続して大規模な大学生の募集拡大をした結果、2002年に中国の大学教育の大
衆化(国連の定義では、大学の入学生数が、入学可能である年齢の人口の15%に達す
ると、大学レベルの教育が大衆化に達成したと言う)が、国家の「十・五」(第10回
の5年経済目標)目標期日である2010年より8年も早く実現した(17%に到達した)。
このスピードは、同じ期間中の国の経済成長率よりはるかに高いものであった。しか
し逆に、この教育「大躍進」が国内外の厳しい批判を受けることになった、例えば
「科学的合理性の欠如の大躍進」だとか、「人類文明の規律違反」「大学教育の軽
蔑」などと言われている。

つづきは下記リンクよりお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_519.php

【4】第6回SGRAカフェへのお誘い(再送)

■「アラブ/イスラームをもっと知ろう:シリア、スーダン、そしてイスラーム国」

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まり
いただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は、
「SGRAメンバーと話して世界をもっと知ろう」という主旨で、シリア出身のダル
ウィッシュ ホサムさんと、スーダン出身のアブディン モハメド オマルさんを囲ん
で座談会を開催します。

参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局宛て、お名前・ご所属と連絡先をお知らせくだ
さい。
[email protected]

日時:2014 年12月20日(土)14時〜17時
会場:鹿島新館/渥美財団ホール(東京都文京区関口3-5-8)
http://www.aisf.or.jp/jp/map.php
会費:無料

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/6sgra.php

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● SGRAカレンダー
【1】第6回SGRAカフェ<参加者募集中>
「アラブ/イスラームをもっと知ろう」(2014年12月20日東京)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/6sgra.php
【2】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム
「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」
(2015年2月7日東京)<参加者募集中>
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/14_2.php

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