SGRAメールマガジン バックナンバー

[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Creeping Child Poverty”

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SGRAかわらばん546号(2014年12月3日)

【1】エッセイ:謝 志海「忍び寄る子供の貧困」

【2】エッセイ:外岡 豊「飯舘村参観記:菅野宗夫氏の試みについて」

【3】特別寄稿:奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その5)」

【4】第6回SGRAカフェへのお誘い(再送)
  「アラブ/イスラームをもっと知ろう」(12月20日東京)
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【1】SGRAエッセイ#437

■ 謝 志海「忍びよる子供の貧困」

最近新聞等、メディアの見出しで時々目にする「子供の貧困」。どこの子供の貧困を
意味するのかと思えば、日本だった。これは信じられないことだ。日本の子供はみん
なゲーム機を持ち、小学生のうちからスマートフォンを持っている子もたくさんい
る。もちろん身なりも貧困とは到底信じられない。

日本経済新聞の記事を読み進めてみると、厚生労働省がまとめた国民生活基礎調査
で、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合を示す「子供の
貧困率」が、2012年に16.3%と過去最高を更新したという。前回の2009年の調査から
0.6ポイント悪化している。なるほど、数字ではっきりと現れているのだ。子供は労
働しておらず、収入が無いので、親の所得からの算出方法となる。同省は子供の貧困
率上昇の理由として母子世帯が増えていることを指摘している。女性は派遣社員や、
非正規雇用として働いている人が多いので、世帯収入が低くなるのも必然とも言え
る。世帯収入で子供の貧困を測るなら、正社員で終身雇用の父を持つ子供、またはそ
の父親と仕事をしている母(共働き)を持つ子供との世帯収入の差は格別に大きいだろ
う。正直なところ、個人的視点だが日本の子供のイメージは、先述の通り物に恵ま
れ、親はお受験のために塾や習い事に惜しみなくお金を掛けていると思っていた。私
は、貧困率の上昇もさることながら、この収入格差が気になってきた。収入格差に
よって、様々なチャンスに恵まれる子とそうでない子の差が拡大されることは、今後
の日本に何か悪い影響をもたらすのではないかと。

親の所得はそれぞれ違えど、子供達は格差無く教育を受けるチャンスがあれば良いの
ではないだろうか?日本は、塾通いが主流になっている。生活が苦しい家庭は塾の月
謝を捻出出来ず、子供に学習習慣を身につけさせることすらできないのか?そもそも
何故日本の子供は塾に通うのだろうか。一番は受験対策だろうが、もう一つは学校の
教育力が落ちているからということだ。信じがたい事実だが、OECDの調査によると、
日本政府支出の教育に占める支出は32カ国中31位である。学校教育が十分でないなら
日本の子供の塾通いはしばらく続きそうだ。このまま子供たちが親の所得格差に翻弄
され続けたら、どのような日本になるのだろう?

親の貧困環境が子供の貧困に深く影響していることを、アメリカの著名な経済学者で
あり、コロンビア大学地球研究所長(The Earth Institute)のジェフリー サックス
氏(Jeffrey Sachs)は、以前より多くの面から問題視しており、アメリカでは貧困の
状況が世代を超えて伝染していて、この連鎖を断ち切るべきとしている。彼の論文に
よると、アメリカでは、離婚家庭に限らず、無職、病気はたまた投獄されている親の
子供が貧しい地区に住み、教育レベルが低い学校に通うという貧困に閉じ込められた
サイクルの中にいる。そしてそのような環境下で育った子は最終的に貧しい大人、す
なわちスキルも無くまともな職につけないような大人になってしまうという負の連鎖
が続く。このような貧困状態の子供の増加は国の経済成長をも鈍らすと警鐘を鳴ら
す。サックス氏が更に強調するのは、これは物質的に豊かであるアメリカで起こって
いることだ。先進国日本でもこの負の連鎖は有り得ない話では無いのではなかろう
か。

手遅れになる前に、子供の貧困とその連鎖を食い止めるには?その解決策もサックス
氏が教えてくれる。彼が昨年発表した論文「苦しむ子供たち、苦しむ国」では子供た
ちに平等の機会を与える事を徹底すべく、公的資金を投資すべき、としている。日本
には「子ども手当」があるが、うまく機能しているのだろうか?次回の調査で日本の
子供の貧困率が下がることを期待する。

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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい
る。
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【2】SGRAエッセイ#438

■ 外岡 豊「飯舘村参観記:菅野宗夫氏の試みについて」

真手(までい)という言葉は初めて知ったが、江戸時代あるいはそれ以前から日本の
伝統的な社会を支えてきた、勤勉、善良な農民の生活意識と行動を表した言葉に見え
る。なかなかよい表現である。持続可能社会を目指せ、というのが環境問題研究者と
して私が社会に強く訴えるべき重要な事項であり、日夜それを考えているが、要は、
化石燃料と原発への依存を脱却することと同時に、社会全体が真手になればかなり達
成されるはずの目標である。だから飯舘村の再生への試みは持続可能社会への入り口
探しなのであり、日本中をその方向に向けてひっぱってゆく、最先端を知らずに担っ
ているのである。

他の村にはない脱原発への強い意志がここに集中しているのは当然であろう。両方を
併せ持っている村がここにある。真手な生活を実践している人々には当然のように考
えられることが、被災していない東京では完全に忘れ去られており、飯舘村に来て菅
野さんの話を聞くと、都会人が何を失っているのか気づくよいきっかけになるだろ
う。真手の精神と前向きな試行錯誤への姿勢は、突然奈落の底に落されたような事態
においても、あるいは見えにくい放射能というやっかいな汚染状況においても、再生
への着実な原動力になる。このような人がいる村はたとえ一度どんなに人口が減ろう
と、いつか立ち直ることができるだろうと確信する。行政の混乱で明らかなように、
実は都会が、東京の社会が、霞が関も銀行も大手企業も、当事者能力に欠けている人
が多く、菅野さんのような頼もしい人が見当たらないのである。それは実は非常に深
刻な事態なのであるが、それを深刻と考えていない人が大勢であることそれ自体が、
実は見えにくい危険事態なのである。奇妙なことに放射線の見えにくい汚染と都会の
見えにくい無責任さとが符合しており、複合化した更なる危険に持ち上げられている
ようである。

それは大学も似たようなもの、自分の組織で打破できていないので大きなことは言え
ないが、旧態依然の規則にしばられ、というより柔軟な運用ができず、ちょっとした
ことができない、許されていないと言われて、成果、効果がそがれてしまうことは
多々ある。教員も事務方も、どちらも自分はこの件の主役ではないと言って逃げてし
まい、結果に責任を持とうとしないのである。このような事態はイギリスの大学でも
同様であった。数年前までの中国は全く逆の問題がありそうに見えたが最近どうなっ
ているのかはわからない。

高校時代から田舎の農村の景色を水彩画に描いてきたが、それは里山に象徴される自
然と一体化し、その恵みをいただいて生活する本来の日本の生活への共感が裏にあっ
た。まさに真手な生活の場としての農村集落と伝統民家にひかれるものがあった。
今、環境問題の専門家として、若いころ描いた絵の世界に回帰している。半ば予定さ
れていたかのような人生の変遷は自分の根底にある価値観がそうさせているのであ
り、それは神から与えられた使命のようなもの、自分の内部のこだわりとしてできる
こと、できないことが明らかにあるのである。

今回渥美財団関口グローバル研究会の御縁でようやく飯舘村に来ることができ、大震
災から3年半後に初めて被災地を体験する機会を得たが、そこで思いがけなく旧知の
田尾さんの御世話になることになった。それは偶然以上の何かが隠れていると思わざ
るを得ない

つづきは下記リンクよりお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_516.php

SGRAふくしまスタディツアーの報告は下記URLよりお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/news/3sgra3.php

【3】特別寄稿

SGRAエッセイ#434

■ 奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その5)」

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SGRAでは、会員の奇錦峰さんのエッセイ「中国の大学の現状」を2007年にかわらばん
で配信し、「われら地球市民」(ジャパンブック、2010年)に収録しましたが、2014
年8月にバリ島で開催した第2回アジア未来会議でさらなる報告がありましたので、数
回に分けてご紹介しています。
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まずは両親の責任

以下の3点(溺愛、放任、偏向)から今の親たちの責任を追求してみましょう。

1. 溺愛

親が何でもかんでも子供のためにやってあげる、その程度が酷すぎる。大学に来る前
のことは後述するとして、まず、新入生が自分一人で入校手続きに来ることはほとん
どない!サーバントアテンダントのように両親や祖父ちゃん婆ちゃん、或いは親戚の
人々が大勢で来校し、かつトランクを引っ張ったり、いろんな荷物を運んだりして、
その忙しい風景は賑やかである。一方、本人は何も持たずにぶらぶらやってくる。当
然のことながら、両親が入校手続きを全部やってあげ、更には宿舎の掃除、ベッドメ
イク、等々を全部担当する。幼稚園に子供を送ってあげていた時より細やかだ。しか
し本人達はこれを当たり前のことだと言うのだそうだ。もっと傑作なのは、本来「見
送り」に来た親が、学校の近くに部屋を借りて、子供に付き合ってあげる(洗濯、部
屋の片付け、食事の支度などをしてあげるため)ことも結構あるそうだ。何故両親達
は、このようにしてあげるのか?彼らの理屈を一言で表すと、とにかく「心配、不
安」である。例えば「家(うち)の子は今まで家を出たことがない……最初の旅なの
で」とか、「重要な書類を紛失する恐れがある」とか、「治安が悪くて心配」とか、
また「子供は自己制御力(セルフコントロール)が弱いから」、これも心配、あれも
心配、例えば朝寝坊、夜のネット遊び、そして男女同棲……。この親達は、どうして
自分の学生時代のことを考えないのか、誰だって生まれた時から何でもできるはずは
ない、やらせなければ永遠にできないということを何故忘れてしまったのか、不思議
だ。

2. 放任

大学に入学した子供の生活費が、ほとんどの親達にとって非常に難しい問題だそう
だ。すなわち、多く渡しすぎると金使いが荒い習慣がつくことを心配し、他方、少な
すぎると不当な扱いを受け、つまり苦しい生活を送らせてしまうことをまた心配す
る。親たちの暖かい心に感心はするが、言い換えれば、まさに世の中に子供を可愛が
らない親はいないということだ。中国では父母が金持ちであれば、子供も豊かなのが
事実で、「豊かな第二世代」という新しい用語も近年出来ている訳はこういう現実が
あるからだともいえる。しかし「親がいくら金持ちでも子供たちに贅沢はさせない」
と言う欧米人の哲学との間には、どんなに差があるだろうか!中国の諺でも「子を甘
やかすのは殺すようなものだ」と言われているのに、今の親達は、これを忘れたの
か?

大学の食堂(特に国立大学)は政府が補助金を出しているので食事代は安い、おそら
く全国どこでも5 元か6 元(1元=19円)で一人分の食事が十分購入出来、しかも
キャンパス外の飲食店の物より清潔且つ安全だ。しかし一部の大学生(つまり生活費
を多く貰う人)はメンツの為か?美食者?なのか、よく外食し、しかもパーティー、
食事会(集まり)などを必要以上にやるのだ。この様な贅沢な習慣を、親が黙認する
から彼らは平気でやる。

コンピューターは、学校の自習室、図書館にたくさん設置されていて、インターネッ
トをするには非常に便利だ。しかも、大学2年生までは基礎教育なのでごく少数の専
門以外コンピューターはいらない。しかし今の学生は1人1台(しかも全部ラップトッ
プ)持っており、基本的にはゲーム遊びに使用されている。特に、家庭の経済状況が
よくない学生は、自分で用意する必要はないのに!外国語を勉強するためどうしても
必要と親に言っていた理屈は、全部嘘だ。ゲームに夢中になり、その結果、学業を断
念せざる得なくなる「事件」は少なくない。パソコンを保有することの悪い点は、絶
対に良い点より多いのだから、買わない方が得策だ。

つづきは下記リンクよりお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_515.php

【4】第6回SGRAカフェへのお誘い(再送)

■「アラブ/イスラームをもっと知ろう:シリア、スーダン、そしてイスラーム国」

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まり
いただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は、
「SGRAメンバーと話して世界をもっと知ろう」という主旨で、シリア出身のダル
ウィッシュ ホサムさんと、スーダン出身のアブディン モハメド オマルさんを囲ん
で座談会を開催します。

参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局宛て、お名前・ご所属と連絡先をお知らせくだ
さい。
sgra-office@aisf.or.jp

日時:2014 年12月20日(土)14時〜17時
会場:鹿島新館/渥美財団ホール(東京都文京区関口3-5-8)
http://www.aisf.or.jp/jp/map.php
会費:無料

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/6sgra.php

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● SGRAカレンダー
【1】第6回SGRAカフェ<参加者募集中>
「アラブ/イスラームをもっと知ろう」(2014年12月20日東京)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/6sgra.php
【2】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム
「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」
(2015年2月7日東京)<ご予定ください>

●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員
のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読
いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた
だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。
http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/
● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く
ださい。
● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務
局より著者へ転送いたします。
● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。
● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ
けます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/

関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局
〒112-0014
東京都文京区関口3−5−8
渥美国際交流財団事務局内
電話:03−3943−7612
FAX:03−3943−1512
Email: sgra-office@aisf.or.jp
Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/
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