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[SGRA_Kawaraban] Lee Saebom “Some Thoughts about Animated Nippon Old Stories”

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SGRAかわらばん543号(2014年11月12日)

【1】エッセイ:李 セボン「『まんが日本昔ばなし』をめぐる断想」

【2】特別寄稿:奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その2)」

【3】第8回SGRAチャイナフォーラムへのお誘い(再送)
  「近代日本美術史と近代中国」(11月22/23日 北京)

【4】第6回SGRAカフェへのお誘い(再送)
  「アラブ/イスラームをもっと知ろう」(12月20日東京)
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【1】SGRAエッセイ#431

■ 李 セボン「『まんが日本昔ばなし』をめぐる断想」

近年、日本の文化を代表するようになったアニメは、世界的に多くのファンを確保す
るようになり、留学生の中にはアニメを通じて日本を知り、より知りたいと思うと語
る人が相当数存在する。また、自らをいわゆる「オタク」として分類する外国人に出
会うこともしばしばある。しかし、多くの日本アニメのファンのうちに、これから私
が賞賛しようとする「まんが日本昔ばなし」について語る人はほとんどいないように
思う。元来、海外在住の日本人向けに制作され、その後も国内用の番組として放映さ
れるに留まり、明らかに外国人視聴者を視野に入れていない作品であるからかも知れ
ない。そこで、この場を借りて、日本の文化的な底力を示す作品として「まんが日本
昔ばなし」のことについて語り、そして賞賛したい。

ウィキペディアによれば、「まんが日本昔ばなし」は、1975年から1994年まで、最初
はNET系、後には毎週土曜日の夕方にTBS系列で放映された(その後、2000年代まで再
放送)。一つの物語に当てられた時間は約10分40秒、合計1470の物語が作られた。私
と同世代(30代)の日本の知人たちの証言によれば、子供の頃、土曜日の夕方に誰も
が一度はこの番組を見たことがあり、大概の場合、オープニングのテーマ曲を口ずさ
むことができるほどである。親として観賞した人も多いこと、再放送された期間も含
めれば、戦後生まれの日本在住者の多くは、「まんが日本昔ばなし」の記憶を共有し
ていることになる。

それぞれの物語は、各地方に伝来された昔話から創作童話の類まで様々である。たっ
た二人の声優(常田富士男・市原悦子)がすべての登場人物を演じるという独特の形
式を維持しているが、とても二人だけとは思えない、豊かな演技である。アニメの原
画も、多数のイラストレーターによって作られたがゆえに、見ていて飽きない。何よ
りも、物語としての豊富さ、奥深さが、スゴい!おそらくそれは、子供向けの物語だ
からといって、ただ単に美しい世界を見せねばならないというような強迫観念が無い
からであろう。例えば、死に対する過剰に遠慮がましい姿勢がここには無い。自然と
調和をなして生きた「昔」の人々の、そのありのままの姿を描くがゆえに、病気や死
といった、現代ではやや否定的に観念される(特に子供向けの物語では)事柄をもご
く普通に扱っている。あるいは、ハッピーエンドに拘らないという点も特徴的であ
る。勿論、善人が報われるといったお馴染みの話は多いわけだが、報われない場合も
多い。呆気ない終わり方もそう珍しくない。ともかく、常に終わりを予測できない。
狸や狐、天狗のような想像上のキャラクターが多く登場するとはいえ、全ての話は、
人間に関する真摯な考察に基づいている。

それは、例えば、ディズニーアニメに代表されるような固定された世界観や、近年の
多くの日本のベストセラー漫画・アニメが描くような、人間性を離れた作為性の世界
とは、根本的に異なる。「日本」の「昔ばなし」が語られていると同時に、人間とは
何か、という普遍的な問いがその根底に流れている。それゆえに、外国人である私が
過去の日本にあっただろう美徳にこれほど純粋に惹かれるのであろう。

ある国の昔話を知ることによって、学問的な知識だけでは得られないような見地を得
ることもある。私自身も実際、日本の近世史についていくら専門書をもって勉強して
も、日本で生まれ育った人々が抱いているような過去のイメージを持つことは難し
かった(無論、これは日本だけに限られた話ではない)。例えば、平田篤胤(ひらた
あつたね。国学者。1776〜1843)の『仙境異聞』(天狗さらいにされた少年からの話
を聞いて書かれた本)を読むだけでは、天狗のイメージおよびそれが語られてきた文
脈を掴み難い。同様のことは、狸についても、地蔵様についても言える。活字だけを
通してはつかめなかった、日本の「昔」の人々が営為していた日々の暮らし、その中
での常識といったものが、鮮やかに現れてくるのである。そのような感覚を覚えるこ
とは、自然と歴史と文化への理解を深めることに繋がる。そこで、思いは次のような
ところに至るのである。現在ほど、日本人自身にとっても、外国人にとっても、そう
した感覚を切実に必要とする時代はない、と。そして、間近の歴史ばかりでなく、よ
り長いスパンでの歴史的な想像力を養うための大事な手掛かりがここにあるのではな
いか、と!

ただし、そのような効用の側面を考えなくても、物語として、「まんが日本昔ばな
し」には一見する価値が十分(過ぎるほど)あるように思われる。ぜひご覧いただけ
ればと思う次第である。

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<李セボン(り・せぼん)Lee Saebom>
日本政治思想史専攻。2005年韓国延世大学政治外交学科卒業。2006年に来日し、2009
年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。2011年から2013年まで日本学術振興
会特別研究員。2013年度渥美奨学生。2014年に東京大学大学院総合文化研究科博士課
程修了(学術博士)。現在、韓国延世大学国学研究院専門研究員。
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【2】特別寄稿

SGRAエッセイ#432

■ 奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その2)」

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SGRAでは、会員の奇錦峰さんのエッセイ「中国の大学の現状」を2007年にかわらばん
で配信し、「われら地球市民」(ジャパンブック、2010年)に収録しましたが、2014
年8月にバリ島で開催した第2回アジア未来会議でさらなる報告がありましたので、数
回に分けてご紹介します。
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1. 生活贅沢、寄生的依存

今日の大学生の最大の特徴は贅沢浪費である。入学前の準備から卒業時の片付けま
で、至るところで彼らの金使いのあらい姿(贅沢)が見える。中国のどの大学でも周
辺に商店がずらっと軒を並べる。“金持ち”の大学生軍から利益を得やすいことを店
主は熟知している。レストラン、飲食店、美容室、ITボックス、時間で支払うホテル
(日本のラブホテルに当たる)などがこれにあたる。大学周辺のこのようなホットな
商業は中国では“大学圏経済”と呼ばれ、就業率を上げるなど良い面もあるが、大学
生にとって絶対に良いことではない、さらに大学生の親にとっては、もう完全に災難
だと言わざるを得ない。

1.1 入校時の標準装備

スマートフォン、ラップトップコンピュータ、一眼レフカメラ(最近では、スマート
フォンが高画質のカメラとなり、カメラを買わない大学生が多くなった)などが全国
の大学新入生の“必需品”になっていることは、よく知られている。マスコミの報道
によると20年前には数100元(1元=約19円)で大学に入学できたが、今は平均20,000
元となり、20年間で100倍を超えた。一方で、この20年間の中国人の収入増加率は約
11倍である。なぜこのように、大学入学時の費用のみが、こんなに速く増加したの
か? その理由は、明らかに非合理的な理由、つまり競争心によるものとしか考えら
れない。調査によれば、多くの家庭にはそんな経済的力はなく、明らかに無理をした
わけである。中国には「すべては子供のため」、「いくら貧しくても子どもは貧しく
させない」という伝統的な考え方があり、親たちは、キャンパス内の高い消費環境の
中で生活している自分の子供に不当な扱いを受けさせたくないと考え、親が耐える道
を選んだからだと思われる。しかもこのような入学期の消費の波は、毎年高まりつつ
ある。

1.2 大学在籍期間の贅沢

代表的な都市を中心にした政府或いはマスコミによるいくつかの調査報告によると、
今の大学生の平均生活コストは、毎月1000元ほどである。しかし、「中国統計年鑑
2013」によれば、中国農村の年間一人当たりの純収入は6000元未満である。つまり、
大学生がいる農村部の家庭の経済状況は悲惨ということになる。ある新聞の調査で
は、今の大学生の消費レベルは、半数が両親より高く、割合は都市出身者の44%、農
村出身者の58%を占めている。 

中国4都市の大学生の生活費用の調査の結果は平均1000元/月である。如何なる贅沢を
しているのだろうか、実際に中国全土では、その半分程で普通の生活ができると思
う。 極端に金使いのあらい大学生を除いて、一般の大学生の状況を見てみよう。

1) 一部の大学生はいつもブランド品を追い求めている。大半は何でも新品が好き
で、少しでも古くなればすぐ捨ててしまう。大学生活4年間で、頻繁に使用するもの
を何回も取り替える人は数えきれない。例えば携帯電話を交換しない人は殆どいな
い。また近年、オンラインショッピングが急に流行しており、必要以上にショッピン
グする現象は普通のことになっている。

2) 毎日の食事においても、買いすぎて大量のご飯を廃棄物として捨てている。中国
の食品廃棄物は、毎年2.5〜3億の人口を養うことができるという報告があるが少なく
ともその1/3を、大学生が貢献していると推測されている。

3) 大義、名目を作り、パーティーや集会を頻繁に行う。誕生会の支払いは相当な額
になる。クラス100名全員が行ったことを想像してみてほしい。同級生の一人が試験
でいい成績を取った時、クラスの幹部に選ばれた時、奨学金を獲得した時、スポーツ
の試合で勝った時、などなど。武漢大学の統計では、様々な“人情づかい”の費用は
年間600元以上が6割で、3割は1000元を超えていると報告している。

4) 調査によるとデートにかかる費用は、年間10,000元といわれている、詳細は大半
がレストランで消費、次が高級なプレゼント(誕生日、主な祭日ごとに)、そして、
映画鑑賞などのエンターテインメントである。一部の大学生の恋愛費用は、日常の食
事代を上回っているようだ。しかしながら、恋愛し、同居して最後の結婚まで愛を全
う出来ない人が大半だ。つまり卒業したら別れることが多いようで、その理由は離れ
ていると恋愛感情を維持できないということにあるようだ。

5) 大学の寮は小さな家庭のようで、普通は、5〜8人で共同生活をする。宿舎内の整
理整頓は、当然と思われるが、今の大学生は怠け者が多い。寝具の片付け、洗濯、部
屋の掃除などもできない人がいる。寮がゴミ捨て場と化しているのが、多く見られ
る。片付けや掃除をする人をパートタイムで頼んだり、叔母さんを呼んできてやって
もらう(ついでに洗濯も)こともあるようだ。

6)2008年以前には、学生の約40%がコンピュータを持っていたが、その人たちの多
くの成績が悪く、退学させられた学生もかなりいた。しかし今は、すっかり普及して
しまい学校の方がもう諦めた。親には「勉強のためにはどうしても必要」「無くては
ならない学習ツール」と言って購入しただろうが、コンピュータは勉強のためではな
くゲームのためなのだ。特に大学入学後最初の2年間に、勉強に使用(特に理科系)
することはほとんどない。大学生がゲームに夢中になり、一部の大学生は学業を断念
せざるを得ない状況になり、毎年相当数の大学生が大学から除名されているという報
告もある。いま、コンピュータゲーム(ほとんどがエロ・グロ・ナンセンス)を触ら
ない大学生は、皆無である。2年生までは、一生懸命に遊びに励む学生は、少なくと
も1/3 を占める。今の精神的に空虚な大学生たちは、恋愛(ホモ・レズビアンも)を
しなければ、コンピュータ・ゲームをするしか楽しいことがない。

自分の所得が実質的にない大学生が、高消費を維持するためには親に依存するしか方
法がない。大半の大学生はお金があれば消費してしまい、なくなったらまた親に請求
する。親の苦悩と苦労を完全に無視し、平然としてお金を費やしている。

奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その1)」は下記リンクよりお読みいただ
けます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_509.php

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<奇 錦峰(キ・キンホウ) Qi Jinfeng>
内モンゴル出身。2002年東京医科歯科大学より医学博士号を取得。専門は現代薬
理学、現在は中国広州中医薬大学の薬理学教授。SGRA会員。
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【3】第8回SGRAチャイナフォーラムへのお誘い(再送)

■「近代日本美術史と近代中国」

下記の通り、第8回SGRAチャイナ・フォーラムを、11月22日(土)〜23日(日)に北
京で開催します。
参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局宛て、お名前・ご所属と連絡先をお知らせくだ
さい。
sgra-office@aisf.or.jp

SGRAでは、日本の民間人による公益活動を紹介するSGRAチャイナ・フォーラムを、北
京をはじめとする中国各地の大学等で毎年開催してきましたが、8回目の今回から
は、今までと趣向を変え、「清華東亜文化講座」のご協力をいただき、北京在住の日
本の社会や文化の研究者を対象として開催します。

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/8sgra.php

1日目:2014 年11月22 日(土)14時〜17時
於:中国社会科学院文学研究所 社科講堂第一会議室
プログラムは下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAChinaForum8Program1Japanese.pdf

2日目:2014 年11月22 日(土)14時〜17時
於:清華大学甲所第3会議室
プログラムは下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAChinaForum8Program2Japanese.pdf

【4】第6回SGRAカフェへのお誘い(再送)

■「アラブ/イスラムをもっと知ろう:シリア、スーダン、そしてイスラム国」

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まり
いただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は、
「SGRAメンバーと話して世界をもっと知ろう」という主旨で、シリア出身のダル
ウィッシュ ホサムさんと、スーダン出身のアブディン モハメド オマルさんを囲ん
で座談会を開催します。

参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局宛て、お名前・ご所属と連絡先をお知らせくだ
さい。
sgra-office@aisf.or.jp

日時:2014 年12月20日(土)14時〜17時
会場:鹿島新館/渥美財団ホール(東京都文京区関口3-5-8)
http://www.aisf.or.jp/jp/map.php
会費:無料

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/6sgra.php

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● SGRAカレンダー
【1】第8回SGRAチャイナフォーラム<参加者募集中>
「近代日本美術史と近代中国」(2014年11月22/23日北京)
 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/8sgra.php
【2】第6回SGRAカフェ<参加者募集中>
「アラブ/イスラームをもっと知ろう」(2014年12月20日東京)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/6sgra.php
【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム
「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」
(2015年2月7日東京)<ご予定ください>

●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員
のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読
いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた
だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。
http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/
● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く
ださい。
● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務
局より著者へ転送いたします。
● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。
● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ
けます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/

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