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[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “University Reform in Japan — Do it Now!”

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SGRAかわらばん531号(2014年8月27日)

【1】エッセイ:謝 志海「日本の大学改革、今でしょ!」

【2】インタビュー記事紹介(毎日新聞オピニオン):
    今西淳子「平和国家の歩み、誇りに」
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【1】SGRAエッセイ#420

■ 謝 志海「日本の大学改革、今でしょ!」

今年に入ってからずっと、理化学研究所の女性研究員の新細胞発表に関連するニュー
スが世間を騒がせている。その女性が2011年に早稲田大学に提出した博士論文につい
て、早稲田大学が設置した調査委員会は先日、博士号の取り消しには当たらないと結
論を出した。この結論の非常に興味深い所は「著作権侵害行為であり、かつ創作者誤
認惹起行為といえる箇所」が11カ所もあるとした上で、博士号を認めたことである。
これは早稲田大学の最終の結論ではないし、このエッセイではこれ以上女性研究員の
ことを議論しないが、日本の大学の存在意義とは何だろう?日本の大学の目指すのは
どこなのだろう?と考えずにはいられない。

現在、日本の大学が力を入れているのは、世界の大学ランキングのランクを上げるこ
とと、グローバル人材を育成することであろう。この2つは実は同じゴールを目指し
ている:大学がグローバル化すれば、大学のランクも上がると。このような大学の改
革を日本政府が一生懸命後押ししている。文部科学省は大学をグローバル人材の育成
機関にしようと「スーパーグローバル大学創設支援」を今年度からスタートし、すで
に国公立私立大学から104校の応募があり、現在選考中である。こういった大学のグ
ローバル化の波が押し寄せているからか、日本の雑誌はこぞって世界の大学ランキン
グとその中での日本の大学の位置を特集する。去年あたりから、本屋に行けば毎月ど
こかしらの雑誌が取り上げているのではないか。

世界の大学を格付けするランキングセンターはいくつかあり、評価する基準も微妙に
違うので、ランクインする大学、順位もまちまちだが、それでも共通するのは、トッ
プテンは米国と英国の大学が独占している。アメリカのアイビーリーグ、英国のオッ
クスフォードとケンブリッジ大学がほぼ常にトップ10にいて、だいぶ間が空いてアジ
アのトップとして、東京大学、近年はそこにシンガポール国立大学、香港大学が追い
上げ、その少し後に韓国のトップスクールや中国の北京大学、日本の京都大学と有名
私立大学がひしめき合っているという様相だ。英語圏の大学は長年お決まりのよう
に、トップにランクインし、アジア勢が毎年のランキングを意識し、必死で追い上げ
ている。この構図は当分の間変わらないのではないかと、上述の早稲田大学の博士論
文についての調査結果で、考えさせられてしまう。

大学の評価の一つに、英語の論文数がある。大学の総合ランキングの主流とされる英
教育専門誌「THE (Times Higher Education) 世界大学ランキング」、英大学評価機
関の「QS世界大学ランキング」、上海交通大学の「世界大学学術ランキング(ARWU)」
などは判断基準に入れている。同様に論文の引用された数もカウントされている。と
いうことは、論文の質も問われるのであろう(この見解には賛否両論あるとも言われ
ている)。日本の大学はこの論文に対しての認識が少々甘いのではないだろうか?す
でに他人が書いた本やジャーナルの文章の一部を自分の論文で自分の意見のように語
る事は許されない、それは盗用である。しかし自分の論文に他人の文章を載せて、誰
がどこで(本やジャーナル等のメディア)掲載していたかという出所をはっきり明示す
れば、それを引用と言う。このような当たり前の事を日本の大学生はいつ学んでいる
のだろう?

例えばアメリカの大学では、どんなに小さな論文の宿題でも盗用(plagiarism)は認め
られない。それだけではない、書き方のフォーマットもきちんと決まっていて、引用
した場合は出典を必ず論文の最後に記載する、その明示の仕方(引用文の作者、本や
雑誌のタイトル、出版(掲載)された日付等の記載の順番)までもきちんとルールがあ
る。大半の先生はこの論文のフォーマットが綺麗に仕上がっていないと、論文を読ん
でもくれない。つまりグレードをつけてもらえないのだ。こういった細かいルール
を、アメリカの学生は大学に入学して最初に履修する一般教養から厳しく指導され
る。どのクラスを履修しても一度や二度は必ず、論文のフォーマットについてだけの
授業の日を設けてくれる。シラバス(授業計画書)にも、必ず「盗用」のセクションが
あり、盗用を見つけた時点で単位は認めないなどの厳しい注意書きがある。なので、
生徒の方も論文を書くにあたっての一般的なルールだけでなく、先生が決めたルール
にも敏感なのだ。博士論文で引用文の出所の明示を忘れましたというのが通用するわ
けがない。というか、博士課程の頃には、論文のフォーマットに関してはプロになっ
ていると言っても過言ではない。そもそも学部・大学院を問わず、宿題やテストは何
かにつけて書かせる課題が多いからだ。これがアメリカの大学は、入学は簡単だが卒
業するのは難しいと言われる所以かもしれない。

一方、日本の大学は、入学試験は難しいが卒業するのは簡単と言われている。論文の
書き方について明確なガイドラインが無いのであれば、気楽なものであろう。コピペ
(コピー&ペースト)も罪悪感無くやってしまうのかもしれない。大学側がきちんと生
徒を指導しなければ、生徒に責任を問うことも出来ない。しかも独創性の無い論文が
手元に残ってしまったら、生徒にとっても学生時代の時間が無駄になる。特に博士論
文は一生ついて回るのだ。大学としても、いい論文の数が減ってしまう。すなわちラ
ンキングに影響が出るのではないか?

日本の大学は今が改革の一番のチャンスかもしれないと、今回の早稲田大学の博士論
文をめぐる調査委員会は教えてくれる。今後始まる「スーパーグローバル大学創設支
援」を上手に利用すれば、英語圏や英語環境で経験を積んだ教授を招き、海外のスタ
ンダードで授業を進めてもらうことが可能だ。世界の大学ランキングには「外国人教
員の比率」もある。そこでのポイントを単に外国人教員の数を増やして稼ぐだけでな
く、真にグローバルな人材を育成出来る教授を雇うべきだ。そうすれば、質の高い論
文を出すことも出来るだろう。日本そしてアジアの大学が世界のトップ大学と肩を並
べて戦えるようになるには、ランキングの基準を意識してポイントを稼ぐだけではい
けない。大学を卒業する頃には学生ひとりひとりが規律性を持ち、異文化を理解し
て、多様性のある環境に溶け込める、そのような強い人材を育ててほしい。

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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい
る。
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【2】インタビュー記事紹介

8月22日(金)の毎日新聞オピニオン「論点」に掲載された、今西淳子SGRA代表の記
事をご紹介します。

■ 今西淳子「平和国家の歩み、誇りに」

渥美国際交流財団は鹿島建設の名誉会長だった父の遺志を継いだ家族が1994年に
設立し、知日派外国人研究者のネットワークの構築を目標に、日本の大学院で博士論
文を書いている外国人留学生を対象に奨学支援をしている。今では研究ネットワーク
となり、元奨学生たちが中心となって東京、北京、ソウル、マニラ、台北でフォーラ
ムやシンポジウムを開催している。20年間の留学生との交流を振り返ると、かつて
戦争した国同士でも、冷静に歴史を話し合うことはそれほど困難なことではない。一
方、アジアでは旧日本軍の記憶が家族で語り継がれていることも忘れてはならない。

それぞれの国にはそれぞれの歴史があり、どの国の教科書を見ても自国中心志向が強
い。であるからこそ、歴史認識を巡る議論では、(1)白黒をつけずに複雑な状況を
そのまま受け止め、譲りあえるところを粘り強く探す(2)自国の名誉や責任を負う
ことなく、一人の人間として相手の立場でも考え、複眼的に物事をとらえる(3)急
がなくてもよいが問題を避けない??の三つのポイントが重要だ。

続きは下記URLからご覧ください。

http://mainichi.jp/opinion/experts/
⇒論点:戦後70年を前に/下 戦争責任に向き合う
(無料購読の登録が必要です)

切り抜きは下記よりご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/info/mainichi_opinion.pdf

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● SGRAカレンダー
【1】第2回アジア未来会議 だいせ
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
★☆★無事終了。ご参加、ご協力、ご支援、ありがとうございました。
【2】第8回SGRAチャイナフォーラム
「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください>
(2014年11月22日北京)
【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム
「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください>
(2015年2月7日東京)

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