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[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics #3: Sexually-Harassing Heckling in Public”

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SGRAかわらばん525号(2014年7月2日)

【1】エッセイ: 謝志海「ウーマノミクス(3):公の場でセクハラヤジ」

【2】新刊紹介:王敏、他「『日本意識』の根底を探る」
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【1】SGRAエッセイ#415

■ 謝 志海「ウーマノミクス(3):公の場でセクハラヤジ」

安倍晋三政権が新しい成長戦略と、経済財政運営と改革の基本方針を着々と実行段階
に進めるなか、先日の東京都議会本会議では女性議員の一般質問中に「早く結婚し
ろ」などのヤジが飛んだことが、日本全国だけでなく、世界のメディアでも報道され
てしまった。成長戦略のなかでも、女性の活躍を重視している安倍晋三政権にとっ
て、この事態は「ばつが悪い」ことになるだろう。

概して、アジア各国は欧米に比べると女性の立場が弱く、守られていないという差別
が根強く残っているが、アジアの中でも経済的、知名度的に欧米先進国と肩を並べる
日本までもが、未だに男性優位体質であることが、今回の件で露見してしまい残念
だ。

前述の通り、この件は世界に広く報道されてしまった。都議会本会議の直後から英米
のメディアが、相次いで「セクハラ暴言」などと報道した。米CNNテレビのウェブサ
イトではヤジ問題の記事を、日本の労働市場では男女間の格差が給与 (平均して女性
の給料は男性に比べて3割安い)や人事(女性管理職の数) でも現れていると締めく
くっている。民間企業に女性取締役を増やすようアドバイスしたり、指導的立場の女
性を2020年までに30%増やすことは、安倍晋三政権が豪語していることだ。今回のヤ
ジ問題は、その目標は実現可能なのか?という気にさせられてしまうではないか。こ
の一連の出来事は引き続き世界が注目しているようで、ヤジを飛ばされた塩村文夏都
議は6月24日、東京の日本外国特派員協会で記者会見した。朝日新聞が運営する英語
版ウェブサイトAsia & Japan Watch (AJW)によると、この記者会見に出席していた記
者の反応はいささか冷静であったようで、日本在住歴14年のシンガポール人記者は
「(ヤジ問題を)特に驚かなかった。このような日本の性差別の記事はいつも書いてる
から。」とコメントしている。日本に住んでいる外国人の目にも、男女の扱いの差が
明白とは、悲しい事実である。

そしてこの記者会見に出席していた外国人記者たちは、日本の未来を思いやるよう
な、非常に的確なアドバイスとも言えるコメントをしている。前出のシンガポール人
記者は「この出来事は日本が変わるために必要であると信じたい。」と言った。同じ
く日本在住歴20年以上のフランス人特派員も「この出来事が日本を劇的に変える役割
を果たすことを望む。」と語った。これぞまさに、日本を客観的に観察している人々
の思いであろう。ウーマノミクスのエッセイを通して言っているが、日本は女性の活
用にあたり数値目標を掲げるだけでなく、女性がどういうスタンスで社会に貢献した
いのか今一度耳を傾けることだ。そして具体的にかつ実現可能なレベルから直ちにア
クションを起こさなければいけない。

私が今回のセクハラヤジ問題で気づいたことは男性優位体質だけでない。いかに日本
が世界から注目されているかだ。安倍晋三政権が次々と経済政策を進めているさなか
なので、当たり前と言えばそれまでかもしれないが、やはりアジアを代表する経済国
として、日本の存在感は大きいのだ。そこへ突然、大都市東京では時代錯誤のような
都議会本会議が行われていたとは、世界が驚くのも無理ない。問題はここからだ。こ
の出来事をどう成功カードに切り返すかだ。皮肉にもと言うべきか、英エコノミスト
誌の最新号(6月28日〜7月4日)の表紙を飾るのは、サムライの格好をし、矢を射ろう
とする安倍晋三首相だ。安倍晋三政権が放つ矢を世界は固唾を呑んで見守っている。
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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい
る。
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【2】新刊紹介

SGRA特別会員の王敏様から新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

国際日本学研究叢書19
■「『日本意識』の根底を探る:日本留学と東アジア的『知』の大循環」

編集・発行 法政大学国際日本学研究所
ISSN1883-8618
2014年3月28日発行
http://hijas.hosei.ac.jp/tabid/1275/Default.aspx

「国際日本学」は途上の研究分野であることはいうまでもない。その方法論における
試みとして、法政大学国際日本学研究所の中国・東アジアにおける日本研究チームは
「異文化としての日本研究」の成果活用・開拓的研究の進展を志向した。研究のあり
方を探るため「外部」の視点を可能な限り制限を設けず取り入れてきた。総合的日本
研究の追及を第一義とする基本スタンスに沿うからである。(中略)研究対象として
日本意識に重点を置いていることに変わりないが、異なる文化背景を念頭に東アジア
諸国などの日本研究の動向およびその成果の有用性に注目してきた。東アジアには国
レベル、国民レベルで共有する価値基準がそれぞれ独自に存在するだけに、日本研究
を深めるためには日本国内外の角度からの地域研究にもっと留意すべきと気づいたか
らである。日本意識の見直しへ参考となる思考枠の抽出のために、地域性を反映した
各国の研究の成果に謙虚に触れるように努めた。(王敏「東アジアの相互認識を映し
出す参照枠」より)

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● SGRAカレンダー
【1】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科)
「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中>
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php
【2】第7回ウランバートル国際シンポジウム
「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中>
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php
【3】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中>
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
【4】第8回SGRAチャイナフォーラム
「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください>
(2014年11月22日北京)

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