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[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Thinking About The Borderless Earth on Earth Day”

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SGRAかわらばん516号(2014年5月1日)

【1】エッセイ:謝 志海「アース・デイ(地球の日)に考えるボーダレスな地球」

【2】第47回SGRAフォーラムへのお誘い〜参加者募集中〜(5月31日東京)
 「科学技術とリスク社会〜福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」
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【1】SGRAエッセイ#408

■ 謝 志海「アース・デイ(地球の日)に考えるボーダレスな地球」

4月22日は「アース・デイ(Earth Day)」地球の日だ。1970年にアメリカで、地球環境
について考える日として提案された記念日である。今では192ヶ国以上がこの日を祝
うと言われている。私の母国、中国では環境保護の意識がまだ薄く、アース・デイの
存在すら知らない人もたくさんいるであろう。日本でも各地でアース・デイのイベン
トが開催されているが、アメリカほど知名度はないのではないか。

だが日本人は普段から環境に関しての意識が高く、環境保全の活動は今や生活の一部
になっているようだ。アース・デイのようにわざわざ記念日を設けなくとも、環境保
全を啓蒙するイベントは年間を通じて日本の各地で行われている。私が日本でホーム
ステイ生活を始めてびっくりしたことの一つは、ゴミの分別がとても細かいことだっ
た。ペットボトルや紙(新聞、段ボール)はともかく、肉、魚のトレイ、牛乳パッ
ク、卵のプラスチックケースまで!中国ではこんなことは有り得ない。2008年の北京
オリンピックの前まではゴミの分別は一切無かったが、オリンピックを機にやっと
「回収可能」と「回収不可能」の二種類に分けられた。しかし、何が回収可能で、何
が回収不可能か、はっきりと分けるルールがなく、国民は困惑しているようだ。そん
な国から来た私が日本に来て更に驚いたのは、日本人はゴミの分別を自然にやっての
ける上に、どの曜日がどのゴミの回収日ということも把握していて、きっちり指定さ
れた日にゴミを出す。これは賞賛に値する。その後私はホームステイを終え、一人暮
らしを始めたが、ゴミの分別までは自宅で出来ても、それぞれをいつ出すかの習慣ま
ではなかなか定着しなかった。指定日に出しそびれることもしばしばで、正直、家が
ゴミ捨て場のようになってしまったこともある。

日本人の友人は米国留学時に、自宅アパートの巨大なゴミ用コンテナに生ゴミ、衣
類、家電、はたまた家具やベッドのマットレスまでが一緒に捨てられていて、大変
ショックを受けたそうだ。アメリカ大陸に比べ、国土の狭い島国の日本はゴミの行き
場が無いので、ゴミをなるべく少なくしたり、再生したりする必要があるのだろう、
と感じたらしい。学校教育でも、小学校から環境についてしっかり教えている。環境
問題をテーマにポスターを描くことは、義務教育を受ける者なら誰もが通る道であ
る。それだけでなく、例えば、世田谷区の公立小学校では、学校がリサイクル可能な
ゴミを受け入れて分別している。そのゴミを業者が集めにきて回収し再生するという
システムを作っている。学校の生徒だけでなく、学校周辺の人もゴミをリサイクルに
持ち込むことが出来る。これはPTAの活動であるが、リサイクルに出したゴミの収益
金は子どもの教育活動に還元されている。ゴミの分別、回収、再生、そして自分たち
に返ってくるといった流れを幼いうちから知ることはとても大事だと思う。

こういった教育が、日本人を「環境保全を意識する国民にする」のだと痛感するばか
りだ。中国では環境教育は一応道徳教育の枠組みに入っているが、あまり重視されて
いないようだ。全体的に、国民の環境に対する意識がかなり低い。近年よく報道され
るのは、大型連休(10月の国慶節)の時、公の場で大勢の観光客が去った後、いつも
山のようなゴミが散らかっている光景だ。国民の環境保全意識をあげるため、日本の
ように、子どもの段階から学校教育でしっかりこの課題について取り組む必要がある
のだ。2009年から国際連合環境計画の協力によって、ようやく「中国子ども環境教
育」というプログラムが発足した。

昨今のアジアを悩ます環境問題といえば、中国が排出するPM2.5であろう。
環境省のホームページによると、PM2.5は大気中に浮遊している2.5マイクロメートル
(1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1)以下の小さな粒子のことで、非常
に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器や循環器系への影響が心配されて
いる。日本で取り上げられるニュースはもっぱら、見通しの悪い北京や上海の光景
と、日本に飛来してくるPM2.5の量である。しかし、よみうりテレビの最近のニュー
スによれば、日本で検出されるPM2.5は必ずしも中国飛来のものだけでなく、日本国
内で発生しているものもあるとのこと。環境科学研究センターの成分分析によると、
中国発生のPM2.5は石炭を燃やした際の化学物質や、工場から排出される煙が主な原
因であり、日本(群馬県)で検出されたPM2.5は自動車や工場などから排出したもの
であることがわかった。日本国内ではそのどちらも検出されているのだ。

PM2.5の測定は、日々日本の各地で行われており、随時インターネットや、テレビ
ニュースで知ることが出来るが、対応策に関してはなかなか進まないようである。中
国でももちろんPM2.5はマスコミでよく取り上げられている。国民も強く懸念してお
り、ネット上では文句が絶えない。政府としても十分危機感を抱いてはいる。今年3
月に李克強総理は「政府工作報告」の中で、大気汚染と戦う強い意志を表明し、今年
度だけですでに350億ドルの財政資金を確保し大気汚染抑制を図る。そのほか、石炭
の利用の減少、古いバスや車等の処分、新エネルギーの開発等、いろいろ対策を講じ
てはいる。日本も中国も早急に解決しなければならない問題は同じなのである。

皮肉にもPM2.5は人為的に引いた国境線が何の意味も無いことを教えてくれる。
日本の子どもと中国の子どもを思うと胸が締めつけられる思いだ。日本の小学生は毎
日の学校生活を通じて、環境について学び配慮していても、空から降り掛かってくる
PM2.5には抗えないではないか。また中国の子どもたちも外で元気に走り回れない理
由を知り、自分たちで改善するチャンスが欲しいはずだ。アース・デイには国境をひ
とまず取っ払い、地球規模で環境について考え、未来に何を残したいかについて熟考
したいものだ。後世に残したいのは、明確な国境線なのか、空気がきれいで緑豊かな
地球なのか。

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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載された。
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【2】第47回SGRAフォーラムへのお誘い〜参加者募集中〜(再送)

下記の通りフォーラムを開催しますので、奮ってご参加ください。

■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」

■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 その後懇親会

■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室
     https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/

参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円

お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先、懇親会
への出欠をご記入の上、参加申し込みをしてください。
SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 )

◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf

■フォーラムの概要:

3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」が
語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教授−
宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセンター
教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科学技術と
倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科学だけでは
答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを行います。

1)理工系科学者のみならず社会系科学者、人文系科学者の役割と倫理
2)科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性

〔トピック〕
・福島第一原発事故から考える「科学技術の限界」、「専門家への信頼の危機」
・巨大科学、先端科学が生み出す「リスク社会」の様相
・「科学技術と倫理」の課題及び社会系科学者、人文系科学者の役割
・科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性

■プログラム:

1)問題提起:(5〜10分)
チェ・スンウォン(韓国)理化学研究所/生物学

2)対談:(約40分)
島薗進先生 
  上智大学神学部教授(宗教学/応用倫理)
平川秀幸先生 
  大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授(科学技術社会論)
モデレータ:エリック・シッケタンツ(ドイツ)
  東京大学大学院人文社会系研究科特別研究員/宗教史

3)オープンディスカッション:(約90分)
ファシリテータ:デール・ソンヤ(ノルウェー)
  上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科特別研究員/グローバル社会

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☆★☆エッセイ募集中!
日中韓の政治状況、最近は社会状況まで、とても厳しく、時には暴力的でさえありま
す。ここで語り合う<場>を作るのが、良き地球市民の実現をめざすSGRAの役割りで
あると考え、SGRAかわらばんでは読者の皆様のエッセイを募集します。皆様の自由闊
達なご意見をお待ちしております。
・2000字程度(短くてもかまいません)
・匿名希望の方はその旨お書きください。
・送付先:sgra-office@aisf.or.jp

● SGRAカレンダー
【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中>
「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf
【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)
「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php
【3】第2回アジア未来会議
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
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