SGRAメールマガジン バックナンバー
XIE Zhihai “Worrying About the Future of the Earth”
2025年8月14日 15:28:25
**********************************************
SGRAかわらばん1076号(2025年8月14日)
【1】謝志海「憂う、地球の未来」
【2】SGRAラーニング紹介:動画「近代の超克:東アジア美術史は可能か」
※SGRAの新規プロジェクトです!是非ご覧ください。
【3】SGRAフォーラム/アジア文化対話「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」へのお誘い(9月13日、那覇およびオンライン)(再送)
***********************************************
【1】SGRAエッセイ#800
◆謝志海「憂う、地球の未来」
今年もまた気温が35度を超える日々が続く夏となった。テレビでも「自分は我慢できると思っていても、自宅に居る際はエアコンを使ってください。この暑さは災害です」と呼びかけている。そんな危険な暑さだ。日本に来て10年以上になるが、ここ数年特に感じることは夏に室内の冷房が効きすぎていて、外との気温差が激しいこと。長袖が欲しくなる。
シンガポールや東南アジアでよくあるこの「寒い室内現象」が日本で起きているということは、日本の気候も東南アジアのようになってしまったのだろう。気象庁によると、7月の平均気温は基準値と比較してプラス2.89°Cと統計開始以来、最も高い。なにしろ北海道でも39度に達しているのだ。そんな暑さに慣れていないはずの現地の人たちの無事を祈る。
気温の上昇は日本だけで起きているわけではない。世界的な問題である。2015年にパリで開かれた気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択され、平均気温が上がるのを産業革命前と比べて2°Cよりも低く保ち、1.5°Cにおさえることを各国が目標と定め、5年ごとに見直すことになった。10年後の今、気温が下がる気配はないうえに世界各国が突発的な自然災害に悩まされ続けている。
35度を超える日の外出は、皆それぞれ暑さ対策のためペットボトル飲料を買い求め、日傘をさしている。特にここ数年、人々が小型扇風機を持ち歩くのが夏の風物詩のようになった。これらの生産時とゴミになった後の焼却時の両方で大量の二酸化炭素が放出される。暑さを凌ぐための道具のために、地球の温暖化が進むとは負の連鎖とも言える。もう個人レベルで節電などと、どうにかできるレベルではないかもしれない。
2021年に開かれた米国主催の気候変動サミットでは、主要国家が2030年の温室効果ガス(GHG)の排出量を50%程度に減らすことを表明した。日本は46%減らす目標を表明し、さらに2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言した。中国も2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを目指すという目標を掲げている。米トランプ政権はパリ協定の離脱を繰り返しているが、バイデン政権時は日中と同じように2050年までのカーボンニュートラルを目標としていた。
記憶によると、2012年頃までまだ先進国と途上国はどちらがより温室効果ガス排出削減の義務を負うべきかについて揉めていたが、主要国家がこれほど脱炭素に積極的になったのは、やはり地球温暖化がもたらした気候変動の被害がより深刻になったからだ。さらに化石燃料に代わり、再生可能エネルギー技術が飛躍的に発展していることにより、脱炭素が各国の産業振興への潮流となった。
これらの目標が実現すればどれだけ素晴らしい未来が待っているかと楽しみだ。前述の負の連鎖を断ち切るにはサミットでの話し合い、それを各国が自国に持ち帰り、国民に教育することが非常に大事だ。2015年に国連が定めた持続可能な開発目標SDGsを小学校の授業に取り込み、低学年のうちから学んでいることは素晴らしいと思う。日々のちょっとした省エネやエコな行動が、自分とは遠い所で飢餓に苦しむ人を助けていることに繋がる。それに気づけば前向きな連鎖が生まれ出す。生産と消費のあり方が適切なバランスに変われば、温室効果ガスの排出量が削減され、結果、気候変動の影響を緩和することができる。
この前向きな連鎖を子どものうちから思い描くことができれば、少しずつ暮らしやすい方へ向かうだろう。楽観している暇はないが、自分も周りを巻き込んで、できることから行動しようと思う。まずはペットボトル飲料を気軽に買うことをやめて、水筒を持参することから。
<謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai>
共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。
——————————————
【2】SGRAラーニング紹介
SGRAの新規プロジェクト「SGRAラーニング」は、SGRAレポートの内容をわかりやすく説明する10~20分の動画で、SGRAレポートのポイントを短くまとめた上で、それをめぐる多国籍の研究者による多様な議論を多言語で共有・紹介しています。高校生や大学低学年を対象に授業の副教材として使っていただくことを想定していますが、どなたでも無料でご視聴いただけます。国史対話のレポートと動画は日本、中国、韓国の3言語で対応しています。
◆動画「近代の超克:東アジア美術史は可能か」
「東アジア美術史は可能か」という問いについて考えてみましょう
下記リンクよりご覧ください。
インタビュー:佐藤道信(東京藝術大学名誉教授)
ナレーション:久後香純(京都大学)、加藤健太(明治大学)、黒滝香奈(一橋大学)
スクリプト・動画制作:李趙雪(南京大学)
中国語版も下記リンクよりご覧いただけます。
https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/
この動画は、2014年11月に開催された「第8回 SGRA チャイナ・フォーラム 近代日本美術史と近代中国」に基づいて製作したものです。このフォーラムのレポートは日本語、韓国語、中国語で発行されていますので、興味のある方は各言語のレポートをSGRAのウェブサイトからご覧ください。
レポート第72号「近代日本美術史と近代中国」
SGRAラーニングの動画へのリンクは、SGRAホームページからアクセスしていただけますので、先生方はご授業等でご利用いただけますと幸いです。どなたでも無料で視聴いただけますので、広くご宣伝いただきますようお願いいたします。
https://www.aisf.or.jp/sgra/
——————————————
【3】第78回SGRAフォーラム・第5回アジア文化対話「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」へのお誘い(再送)
下記の通り第78回SGRAフォーラム ・第5回アジア文化対話(Asian_Cultural_Dialogues)「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。
テーマ:「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」
日 時:2025年9月13日(土)9:30~17:30
会 場:沖縄大学3号館101教室およびオンライン(Zoomウェビナー)
言 語:日本語・英語(同時通訳)
参 加:無料/参加登録はこちらから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfTiUYHv0rq7-fPhcniXgj_j73iqRvgZ_P1nAz-TqZIyXhKWA/viewform
※会場参加の方もオンライン参加の方も必ず参加登録をお願いします。
お問い合わせ:SGRA事務局([email protected])
◇フォーラムの趣旨
沖縄はアジア太平洋戦争時に住民の4人に1人が死亡したとされる激しい地上戦を経験している。さらに戦後も日本国内の70%を超える米軍の施設が集中する「基地の島」と化した。女性や子どもを含む非戦闘員が犠牲となった「戦場」の暴力は、現在進行形のグローバルな課題を再考察する上で欠かすことができない題材である。軍事的な対立の際に、私たちはどのように非戦闘員の命を守るための観点を保ちうるだろうか。ジェンダーからの問いが必要な理由がそこにある。
沖縄で開催されるAsian_Cultural_Dialogues(ACDアジア文化対話)フォーラムでは、地上戦を経験し、今なお米軍基地による性暴力事件が絶えない沖縄で、ジェンダーという弱者への配慮を前提とする視点から「過去・現在・未来」につなげる普遍的価値を探る。本フォーラムは「沖縄の問題」を論じるものではない。多国籍の専門家により構成され、その議論の焦点は沖縄という空間で出会う「アジア的視点」と言える。2025年度は戦後80周年という節目の年であり、いかにアジア太平洋戦争時の傷痕に向き合うかをアジア各地で議論する年でもある。議論の場である沖縄はもちろん、アジアの過去、現在、未来に一貫して忘れてはならない本質的な価値とは何かを国際的かつ学際的に、さらにはアカデミアを超えて皆で考える機会になることを望んでいる。
◇プログラム
9:30 開会
挨拶 今西淳子(SGRA)、山代寛(沖縄大学学長)
フォーラムの紹介 洪ユンシン(沖縄大学)
【セッション1 基調講演】
司会:デール・ソンヤ(SGRA)、モデレーター:洪ユンシン
基調講演 冨山一郎(同志社大学)
「暴力に抗する「他者」の眼差し」 45分(日本語)
コメンテーター:宮城晴美(沖縄女性史研究家)、ロバート・リケット(翻訳者)、グオ・リフ(筑波大学)
11:30【セッション2 交差性】各発表30分
司会:イドジーエヴァ・ジアーナ(東京外国語大学)
発表1 高里鈴代(軍事主義を許さない国際女性ネットワーク沖縄代表)(日本語)
発表2 Intan_Paramaditha(マッコーリー大学)
「インドネシアのフェミニズム運動」(英語)
コメンテーター:Nyi_Nyi_Khaw(ブリストル大学)、増渕あさ子(立命館大学)
13:00 昼食・休憩
14:00【セッション3 戦争とジェンダー】各発表30分
司会:リオ・アーロン(シアトル美術館)
発表1 山城紀子(沖縄タイムス元記者・フリージャーナリスト)(日本語)
発表2 Jose_Jowel_Canuday(アテネオ大学)
「平和の最後の数マイル:ミンダナオ島バンサモロ地域のジェンダー化された最前線における長期戦争の後に何が起こるのか」(英語)
コメンテーター:福永玄弥(東京大学)、ヤンヒョナ(ソウル大学)
16:00【セッション4 これからに向かって】各発表20分
司会:洪ユンシン、デール・ソンヤ
発表1 徳田彩(沖縄キリスト教学院大学在学生)、松田明(沖縄キリスト教学院大学卒業生)
「沖縄の基地暴力とジェンダー:CSW国連女性の地位委員会に性暴力を訴えるー沖縄県内の動きを中心にー」(日本語)
発表2 Memee_Nitchakarn (タイの学生活動家)
「タイの若いフェミニスト運動の流れ」(英語)
発表3 仲塚静樹(沖縄大学在学生)
「沖縄戦の記憶を聴く若者たち:証言者との交流で学ぶ活動紹介」(日本語)
コメンテーター:親川裕子(沖縄大学・Be_theChange_Okinawa)、上野さやか(沖縄大学・エンパワメント・ラボ・おきなわ共同代表)、Bonni_Rambatan(Rainbow_Panda)
17:30 フォーラム閉会
※プログラム
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/07/forum78_20250731-2.pdf
※ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/07/forum78poster.jpg
皆さまのご参加をお待ちしております。
*****************************************
★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。
https://www.aisf.or.jp/kokushi/
◇SGRAの新規プロジェクト「SGRAラーニング」
SGRAレポートの内容をわかりやすく説明する10~20分の動画で、SGRAレポートのポイントを短くまとめた上で、それをめぐる多国籍の研究者による多様な議論を多言語で共有・紹介しています。高校生や大学低学年を対象に授業の副教材として使っていただくことを想定していますが、SGRAウェブページよりどなたでも無料でご視聴いただけます。国史対話のレポートと動画は日本、中国、韓国の3言語で対応しています。
https://www.aisf.or.jp/sgra/
●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。
●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。
●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。
●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/
●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。
関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局
〒112-0014
東京都文京区関口3-5-8
(公財)渥美国際交流財団事務局内
電話:03-3943-7612
FAX:03-3943-1512
Email:[email protected]
Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/
*********************************************