2020年蓼科ワークショップ@東京報告


 雨後の涼しい午後に、わたしは江戸川橋の坂道を登って、渥美財団ホールに到着した。7月4日(土)に行われた今年のワークショップは、コロナウィルスの影響で、例年通りの蓼科ではなく、東京で半日間行われることになった。2階に登ると、財団の皆さんが親切に迎えてくれた。ほかの来場者とZoomで参加する方々もお元気で何よりだと思う。

 大学院生の授業やゼミがオンライン方式に移行する中で、今回の「リモート教育の可能性と限界」は、参加者にとって共鳴しやすいテーマである。昭和女子大学で教鞭を取り、教育学を専門とするシム・チュン・キャット先生が来場し、教育現場の経験を生かして問題提起をしてくださった。授業のやり方は、同時双方向型(リアルタイムでやりとりする)、オンデマンド型(音声付きのビデオ、講義資料、PPTを提供する)、課題提出型(講義資料をネットにアプロードして学生が宿題を提出する)などの方法がある。シム先生は、オンライン授業の効果と学生の反応を面白く紹介し、講義を行っている参加者にも話してもらった。

 さらに、博論執筆中の私たちが気付かない一つの社会的現状を教えてくださった。オンライン授業は、大学では普及しやすいかもしれないが、日本の小中高校では経済格差への意識とクラス全員平等の理念のもとで、普及率がかなり低い。そこで、ミヤ・ドゥイ・ロスティカ先生は、インドネシアではオンライン授業が普及していると提示した。そして、マグダレナ・コウオジェイ先生は、大学でもリアルタイムの画面がフリーズするかどうか、そこに格差を感じるという感想をもらした。この意見交換から、異なる出身の私たちは日本社会及び国際社会に対する理解を深めた。オンライン留学は耳に慣れない言葉だが、IT技術が発達する国ではすでに実現され始めている。

 次はグループワークになる。ファシリテーターを担当する4名の先輩方と一緒に、専門知識を盛り込むようなテーマで高校生にオンライン授業を行う、ということについて考える。シム先生の「楽しく喧嘩しよう」の言葉に、私たちは笑いを誘われた。しかし、いざと異なる専門のメンバーと向き合うと、意見が飛び交い、お互いの「接点」とは何かという問題に悩んでしまう。最後の一秒まで真剣に模索し合い、嵐の後の如く発表の会場に戻った。

 発表は、「オンライン授業イベント」、「伝えることの大事さ」、「盗作について」、「科学と人間の共存」それぞれのテーマに基づいたものである。発表を聞いて、専門知識を生かしたみんなの説明力の高さに感心した。いろいろなツール、科学技術や課題提起の方法を用いることで、授業の内容がより豊かになり、時空間や肢体の限界を超える可能性を見つけ出すという討議の内容が興味深い。その中で、病気や体の不自由な学生、交通が不便な地域に住む学生にとってリモート教育の積極性がある、という議論も印象に残った。リモート教育でも、言葉の繋がり、歴史認識、ジェンダー面での平等性、異文化理解、コロナ政策の相互作用など、私たちが関心を抱く課題もきっと人々に伝わると思う。

 懇親会は自由参加だった。社会的距離を取りながら、1人1つの美味しいお弁当と果物をいただく。半日のイベントの感想を話したり、先輩方の就職体験談を聞いたりして、賑やかな雰囲気の中で歓談するのは久々であった。
(文責:呉勤文)

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