1995ラクーン会 in 新宿



ハロウィーンの夜、コスチュームなしの普通の格好で、今西さんを囲んで4匹(Jin、Shi、Yaku、Max)の第一期渥美奨学生の狸が新宿の中華料理店に集まった。3匹は悠久の歴史をもつ中国大陸から、1匹は東アジアの若き島国のフィリピンから来て、20年前に渥美財団で出会った。今回は北京に住むJinさんが来日していることがわかって、今西さんが東京に住む同期生に呼びかけてくれた。

混雑する店内に4時間も居座り、健康や子どもの教育など話題は尽きなかった。集まりに行く前に僕の頭に浮かんだことは、言うまでもなく現在進行中の南シナ海の領土問題である。中国やベトナムやフィリピンなどが南沙諸島(SPRATLY_ISLANDS)の領有権を巡って争っている。実効支配を図るためにどの国も島々に建設を進めてきた。ただ、この数年間に中国は軍事基地としても利用できる埋め立て建設を急ピッチで進めており、地域外の先進国まで巻き込まれて、緊張感が高まっている。

ビールと紹興酒が少し進んだところで、この話題が取り上げられた。12.5%中国系である僕は今のフィリピン政府の強硬姿勢を批判し、中国がいかに好きかについて話した。中国人と結婚している親戚もいる。この夏、フェイスブック上でこの問題について熱い議論をしたことがあった。僕は一所懸命理性的な議論を促したが、フィリピン人の大半は、やはり凄く中国に脅威を感じ、アメリカや日本などの域外先進国の支援を大喜びしている。

実は、僕は、以前、米国などの軍事存在がなくても東アジア地域が繁栄できると信じていたときがあった。フィリピンの反共政策に影響を受けた中国脅威論の中でずっと育てられた僕にとっては、自分でも意外なことであった。

しかしながら、ハロウィーンの夜に中国の友達にも話したように、中国は最近、南沙諸島を両手で掴みとろうとしているが、その砂は指の間から溢れでてしまっている。昨年バリ島で開催した第2回アジア未来会議での基調講演に対して、僕は、「中国は可愛いパンダから凶暴な龍に変身した」とコメントした。つまり、東アジアの団結は僕も心から望んでいるが、それは互いに尊重する友好関係に基づかないと成り立たないと思うのだ。数学が好きなShiさんもこの中国の行動について疑問を述べていた。

20年前と一番変わっていないYakuさんが、SGRAの「良き地球市民の実現」に言及し、最近、地球市民の理念が弱くなってきているのではないかという心配を分かち合ってくれた。僕はすぐに反応して、こんな時代だからこそ、この理念をもっと大事にして発揮しなければならないと言った。通じたかどうか、わからないが、本当に僕はそう思っている。僕らに続く渥美奨学生たちが、このことをどのぐらい意識しているのか、ちょっと心配である。

来年の2月10日、SGRAフィリピンが、マニラのアテネオ大学で企画している第20回共有型成長セミナー(テーマ:human ecology and sustainable shared growth人間生態学と持続可能共有型成長)を開催すると今西さんが告知すると、お酒が一番強いJinさんが「行こう!行こう!」とみんなを誘ってくれた。その半分は10杯を超えるビールの勢いだったと思うが、とても嬉しく思っている。たとえ実現しなくてもこうやってみなさんと話せれば幸いである。

夜が更けてお別れの時間がきた。僕の頭によく残っている20年前からのイメージ変わらない、陽気で酔っ払いの狸仲間のJinさんを、仮装した人々で溢れている東京の街で、その賑やかな人込みで迷わないように地下鉄に乗せるまで見送った。

(文責:マックス・マキト)