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エッセイ807:謝志海「日本の寒い家 続編-進化する日本の家-」
ある日、知人との何げない会話のなかでふと言われたことに一瞬ついていけないことがあった。「家の中は暖かいから冬場もまだ暖房をつけたことがない」 日本の家って寒いのが当たり前じゃなかった?
以前、私は「日本の寒い家」についてエッセイ(かわらばんエッセイ449)を書いた。そのとき北京やニューヨークなどでは一般的な、家中を一括で暖めることができるセントラルヒーティングについて語り、日本ではなぜ冬の脱衣所が寒いままなのだろう、ヒートショックで命を落とすことがあるかもしれない、と心配していた。
あれから10年程経ち、日本の住宅事情は何か変わったのかと興味を持ち少し調べてみた。すると2025年4月に建築基準法が大きく改正され、新規で建てる建築物は「断熱等性能等級4以上」および「一次エネルギー消費量等級4以上」の適合が求められることになった。具体的には建築時に外壁などの断熱性能の高い素材を使う、その断熱性には等級があり、それまで等級4が最高等級だったのが22年に等級5、6、7を新設して、等級4が最低限必要な基準となった。断熱性能の向上だけでなく、そこに等級を加えることで、快適さを判断しやすくなるというのはすごいことだ。
一次エネルギー消費量等級4以上はというと、LED照明を使用する、壁に断熱材、複層ガラス窓の採用などで冷暖房や給湯などのエネルギーの消費を削減し、この等級が高いほど光熱費が安く済み、住環境性能が向上するというものだ。
セントラルヒーティングと全く逆のアプローチで寒い家問題を解決している。なんということだ。日本は家を建てる時点で寒さを屋内に持ち込まない、そうすればエアコンの使用も抑えられ、光熱費も安くなり、人の生活にも地球にも優しいという考えだ。 現在はエネルギー源がだいぶ天然ガスへ移行しているようだが、私が北京で学生時代を送っていた頃は、セントラルヒーティングには石炭を燃料に使用しており、寒さ厳しい時期の北京の街は大気汚染がひどかった。
法改正に話を戻すと、これから建てる家が快適なのであって、既存の住宅に住む家庭の家は寒いままだ。 私は築30年のマンションに住んでいるが、窓ガラスは複層ではなく薄っぺらいので、冬場は窓の近くに寄っただけで冷気を感じるし、結露がひどい。 その前に住んでいたマンションは複層ガラスだったので、その差は大きいと毎年の夏と冬に実感している。
築年数が古い住宅に住んでいる人や、中古物件を買おうとしている人には省エネ住宅で快適に暮らすことはできないのかというと、そうでもない。環境省は「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」など新築に限らずリフォーム住宅の断熱性能の向上・省エネ化のための補助金制度を実施している。現在、快適とは程遠い生活をしている私にとっては、朗報だ。
建築基準法の改正は25年だけでなく、適宜行われていることも今回分かった。冒頭の知人の、冬も暖かい家とは22年頃に建てられた新築マンションである。近年の気候変動、自然災害、地震と辛い経験を通じ、法改正をもって即座に動き、人の生活を安全に快適に守るということはとても大事なことだ。そういう施策を見逃さないように、今の生活に疑問を持ち続け、生活向上のための解決策を探り続けたいと思った。
<謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai>
共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。
2026年2月19日配信



