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エッセイ800:謝志海「憂う、地球の未来」
今年もまた気温が35度を超える日々が続く夏となった。テレビでも「自分は我慢できると思っていても、自宅に居る際はエアコンを使ってください。この暑さは災害です」と呼びかけている。そんな危険な暑さだ。日本に来て10年以上になるが、ここ数年特に感じることは夏に室内の冷房が効きすぎていて、外との気温差が激しいこと。長袖が欲しくなる。
シンガポールや東南アジアでよくあるこの「寒い室内現象」が日本で起きているということは、日本の気候も東南アジアのようになってしまったのだろう。気象庁によると、7月の平均気温は基準値と比較してプラス2.89°Cと統計開始以来、最も高い。なにしろ北海道でも39度に達しているのだ。そんな暑さに慣れていないはずの現地の人たちの無事を祈る。
気温の上昇は日本だけで起きているわけではない。世界的な問題である。2015年にパリで開かれた気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択され、平均気温が上がるのを産業革命前と比べて2°Cよりも低く保ち、1.5°Cにおさえることを各国が目標と定め、5年ごとに見直すことになった。10年後の今、気温が下がる気配はないうえに世界各国が突発的な自然災害に悩まされ続けている。
35度を超える日の外出は、皆それぞれ暑さ対策のためペットボトル飲料を買い求め、日傘をさしている。特にここ数年、人々が小型扇風機を持ち歩くのが夏の風物詩のようになった。これらの生産時とゴミになった後の焼却時の両方で大量の二酸化炭素が放出される。暑さを凌ぐための道具のために、地球の温暖化が進むとは負の連鎖とも言える。もう個人レベルで節電などと、どうにかできるレベルではないかもしれない。
2021年に開かれた米国主催の気候変動サミットでは、主要国家が2030年の温室効果ガス(GHG)の排出量を50%程度に減らすことを表明した。日本は46%減らす目標を表明し、さらに2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言した。中国も2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを目指すという目標を掲げている。米トランプ政権はパリ協定の離脱を繰り返しているが、バイデン政権時は日中と同じように2050年までのカーボンニュートラルを目標としていた。
記憶によると、2012年頃までまだ先進国と途上国はどちらがより温室効果ガス排出削減の義務を負うべきかについて揉めていたが、主要国家がこれほど脱炭素に積極的になったのは、やはり地球温暖化がもたらした気候変動の被害がより深刻になったからだ。さらに化石燃料に代わり、再生可能エネルギー技術が飛躍的に発展していることにより、脱炭素が各国の産業振興への潮流となった。
これらの目標が実現すればどれだけ素晴らしい未来が待っているかと楽しみだ。前述の負の連鎖を断ち切るにはサミットでの話し合い、それを各国が自国に持ち帰り、国民に教育することが非常に大事だ。2015年に国連が定めた持続可能な開発目標SDGsを小学校の授業に取り込み、低学年のうちから学んでいることは素晴らしいと思う。日々のちょっとした省エネやエコな行動が、自分とは遠い所で飢餓に苦しむ人を助けていることに繋がる。それに気づけば前向きな連鎖が生まれ出す。生産と消費のあり方が適切なバランスに変われば、温室効果ガスの排出量が削減され、結果、気候変動の影響を緩和することができる。
この前向きな連鎖を子どものうちから思い描くことができれば、少しずつ暮らしやすい方へ向かうだろう。楽観している暇はないが、自分も周りを巻き込んで、できることから行動しようと思う。まずはペットボトル飲料を気軽に買うことをやめて、水筒を持参することから。
<謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai>
共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。
2025年8月14日配信



