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エッセイ569:ジョセフ・アンペドゥ・オフォス「日本での運転から学んだこと」

(私の日本留学シリーズ#20)

 

日本に来て1月も経たないうちに、私はある体験をした。それは最初で最後となるものではなく、その後も繰り返し体験することになる、日本文化に染み付いたものであった。その体験とは,電車の線路沿いの道路の改修に関するものである。驚くべきことに、作業員たちはたったの12時間で1kmほどの道路を掘り起こし、舗装し、そして塗り直したのである。ある日、私は午後9時頃に研究室から宿舎に帰る際に、作業員たちがバリケードや作業用の道具、照明などを準備しているのを目にした。そして翌朝8時、研究室へ向かう電車に乗るために歩いていると、なんと昨夜工事の準備をしていた道路が完璧に改修されていたことに気づいた。私はこのことにとても感心し,“作業員たちはたった一夜でどうやって作業を終えたのだろうか?”、“一体このメンテナンスはどの程度もつのだろうか?”といったことを考えながら駅までの道のりを楽しんだ。

 

他の国であれば、1kmもの道を改修するには何日、あるいは何週間もかかっただろう。この道は京王井の頭線の駒場東大前駅の近くの道だった。私はこの体験から、メンテナンスが素早く行われることは社会をより良く回すことにつながるということを学んだ。この体験は例外ではなく,むしろ日本社会のあらゆるところに見られるものであった。高速道路や一般道路を走ればこの体験はありふれたものであるとすぐに気づくだろう。もちろん改修が頻繁であるからといって、すぐにやり直さなければならない雑な仕事ぶりを暗示するものではない。むしろ安全と安心のために道路の改修は常に行われているのである。

 

私が日本の道路から学んだことはもう一つある。それは高速道路を運転する時、特に道が混雑している時には常に周りの人がどうしているかをよく見て、彼らに従って動くべきだということである。急いでいるからといって“決まり”から外れた動きをすると、かえって遅れることや後悔することにつながるからだ。例えば、片側2車線の道路で、隣の車線の方が車通りが少なく早く進んでいるように見えても、安直に車線変更するのはお勧めできない。なぜなら空いている道路の出口は実は混み合った高速の入口につながっているかもしれないからである。道路の標識は高速道路の入口や出口から1~2km程度しか離れていないところにしかないことがあり、気づいた時にはもう遅い、ということもある。ここから学んだことは、急ぐことは早く物事を進めることにはつながらず、むしろ痛い目にあう可能性もあるということだ。人生は急がず、ゆっくりと1歩ずつ進めばいい。

 

日本のドライバーの素晴らしいところは、常に感謝の気持ちを表すための準備をしていることである。他のドライバーに道を譲った際には、ほとんどの人が「ありがとうございます」とハザードランプを2、3回点滅してくれる。アクアラインや常磐高速、東名高速、首都高などで必ずと言っていいほど目にする光景である。ここから、他人が優しさや親切心を持って接してくれた際には感謝を表すべきだということを学べる。

 

私にとって、運転は昔から身の回りで起きていることを観察し、学ぶ場であったが、日本で運転することで新しく学べたことは思ったよりもたくさんあった。このような経験から根気や忍耐、勤勉さ、謙虚さ、そして近所の人を含む環境への思いやりなどを学んだ。

 

英語版(原文)

 

<オフォス・ジョセフ・アンぺドゥ Joseph_Ampadu_Ofosu>

ガーナ出身。東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー専攻小紫研究室博士課程。研究テーマは、未来の宇宙推進応用のためのレーザープラズマ物理とレーザー支持爆轟波。現在、イマジニアリング株式会社でプラズマアプリケーションの研究開発を行っている。

 

 

2018年5月24日配信