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エッセイ365:包 聯群「大学の町マサチューセッツ州アマースト」

昨年の夏休みにアメリカのアマースト市(町)にあるマサチューセッツ大学を短期訪問する機会がありました。アマーストという町はニューヨークまでおよそ175マイル(1マイルは1609メートル)、ボストンまで90マイルのところに位置しています。2010年の国勢調査によると、人口が4万人に満たない「小さな」町です。広さは、27.8平方マイル(72.0km2、そのうち、土地は71.7km2、残りは水域)です。以下、アマーストを訪れて、自分で感じたこと、そして体験したことなどをいくつかの内容にわけて述べてみます。

 

1.大学

 

この町は「大学の町」として有名です。アマーストカレッジ、ハンプシャー カレッジ、マサチューセッツ大学(アマーストに3つのカレッジ)があります。周辺町のカレッジも含むと、5つのカレッジとなり、お互いによく連携しているそうです。毎年、この5つのカレッジは外国人研究者を歓迎するパーティーを共催しています。マサチューセッツ大学には2万8千人近くの学生がいて、そのうち、中国から来た留学生が最も多く、昨年度だけでも200人以上にのぼるそうです。アマーストカレッジの学生数は2千人程度ですが、大学の教育の良さは全米でも有名で、トップ5位以内に位置している私立大学であると言われています。この大学では少人数による教育を実施しており、学費も他の大学の2倍以上かかる、所謂「貴族」大学です。

 

大学が休みの間は、この町は非常に静かになりますが、大学が一旦始まると、若い人であふれるにぎやかな町になります。レストランもそれに従って収入の増減があるそうです。町には中華料理店や日本の「すし」屋もあります。両方とも評判がよいそうです。

 

2.「オープン」式の図書館

 

マサチューセッツ大学の図書館は入館証なしで誰でも入館することができます。さらにコンピューターの一部を市民にも開放し、自由に使うことができます。新学期が始まる(9月初めごろ)と、金曜日を除いて、大学の図書館は24時間開いています。図書館は高層ビル(周辺には他の高層ビルがない)で、23階に上がると、周辺の風景を一望できる(四方は透明なガラス)ため、風景を見るために人々が大勢訪れています。特に秋になると紅葉が綺麗です。一階のエレベータの入り口のそばやエレベータの中には、「23階に行けば景色がよく見えますよ」という写真付きの紙が貼られています。図書館は26階までありますが、23階以上は事務室になります。この図書館の高さは全米の大学図書館の中でもナンバーワンだそうです。

 

図書館には、院生たちの個室が多く設けられており、申請すれば、個室として一年間かそれ以上使うことができます。そして、一階には、食べ物や飲み物を売っている店があり、そこで休憩を取ったり、飲食したりすることができます。地下一階は学生の自習室で、そこで、プリンタ、コピー、スキャナーなどを使うことができます。留学生のための「ライテングセンター」も設けられています。留学生は週2回程度ネットを通じて予約することができ、そこで論文を直してもらえます。言うまでもなく、スタッフのスケジュールが空いていれば、当日の受け付けも可能です。

 

大学の身分証明書があれば、図書館の本を機械にタッチするだけで借りることができます。そして、入口にあるインフォメーションの窓口の机の上には、大学の図書館の名前を印字した鉛筆やボールペンなどが多数置かれており、必要な人は自由に取って使い「記念品」とすることもできます。

 

3.町のサービス

 

3.1.無料バス・学生運転手

 

市内を回るいくつかの路線バスには、誰でも無料で乗れます。主に学生を対象としていますが、市民も利用できます。43路線ぐらいのバスは料金がかかりますが、(夏、冬)休み時間以外には、学生証があれば、ただで乗れます。面白いことに、バスの前のところに自転車の置き場があって、そこに3台の自転車を同時に乗せることができます。さらに運転手(料金がかかる路線以外)はみんな学生です。これも学生にアルバイトを提供する学校側の配慮(交通会社との連携)と言われています。バスの中も「にぎやか」です。電話をかけたり、大声で話をしたりしています。最初はとてもびっくりしましたが、そのうちに「慣れて」きました。中国語の「入郷随俗」(郷に入っては郷に従え)という言葉を思いだしますね。

 

学校が始まると、バスが15分おきに朝早くから夜遅くまで運転しています。もちろん夜になると、本数が減ってきます。土日も同様に本数が減ります。休み期間には別の運転スケジュールが設けられています。特別な休日とかで運転しない時もあります。

 

3.2.WiFi

 

この町では、「無料」で自由にインタ―ネットに繋げることができ、外出している人にはとても便利です。もし、町に近いところに住めば、家にネットがなくてもよいので、家計も節約できます。これについてはニュースでも報じられており、アメリカの多くの都市で無料使用の試みを始めていると言われています。

 

3.3.休日の「ファーマーズ・マーケット」

 

休日や毎週水曜日になると、農民たちが自分で生産した無農薬農産品(野菜や果物、パン・ケーキ、その他)を「市場」に持ってきて販売し、町はとても賑やかになります。無農薬の野菜はふつうの売店のものよりは少し高めですが、それでも多くの人が集まって購入しています。その種類も多いです。

 

こちらの町は「田舎」であるためか、人々はゆったりとした生活を送っています。実際に体験してみて、日本とは異なる面がたくさんあるんだなあと感じました。

 

アマーストの写真

 

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<包聯群(ボウ・レンチュン)☆ Bao Lian Qun>
中国黒龍江省で生まれ、内モンゴル大学を卒業。東京大学から博士号取得。現在東京外国語大学AA研研究員、中国言語戦略研究センター(南京大学)客員研究員、首都大学東京非常勤講師。危機に瀕している言語、言語政策などの研究に携わっている。SGRA会員。
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2013年2月6日配信