人材育成

シム・チュンキャット「第44回SGRAフォーラムin蓼科「21世紀型学力を育むフューチャースクールの戦略と課題」報告」

SGRA「人材育成」チームのチーフとして、今年企画提案させていただいた2012年蓼科フォーラムのテーマは「21世紀型学力を育むフューチャースクールの戦略と課題」でした。今回の企画のスタートは、実は1年以上も前に僕がシンガポールでの調査を終え、日本に戻ってきて渥美国際交流財団の今西淳子常務理事にお会いした時に「いま学校現場ですごいことが起きていますよ」という話をしたことに遡ります。その結果、「21世紀型学力を育むフューチャースクール」実行委員会主催、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)共催で、鹿島学術振興財団の助成、東京商工会議所の協力をいただき、このフォーラムが実現しました。周知の通り、日進月歩に進化しつづけているインターネットや携帯電話などの情報通信手段がわれわれの世界を席巻しています。この流れの良し悪しや個人の好き嫌いはさておき、たったの10年前と比べても人間社会が大きく変化してきた事実を僕達はまず受け止めなければならないのでしょう。そして社会的に見ても人間発達の観点から考えても、この情報革命による影響を最も強く受けてしまうのが、判断力が十分に育っていないうちからあらゆる情報に晒されている子ども達であろうことは想像に難くありません。だからこそ、その子ども達を教育する学校が、この変化の波を正しく捉え上手に活用することを通して、若い世代をより望ましい方向へと導くことが重要なのではないかと考えられましょう。未来に目を据えた学校づくり、即ち未来型学校フューチャースクールのあり方についての模索が近年各国で活発になっているのもこのような背景を踏まえたものです。

 

そこで今回のフォーラムでは、より多くの視点からフューチャースクールの現状と今後について議論する場を提供するために、まず白鴎大学の理事・教育部長、日本教育工学振興会会長でもいらっしゃる赤堀侃司教授、および日本福祉大学国際福祉開発学部学部長、日本教育メディア学会理事でもあられる影戸誠教授のお二方に基調講演をしていただき、次に韓国教育学術情報院研究員の曺圭福先生と筆者がそれぞれ韓国とシンガポールにおけるフューチャースクール戦略について話し、最後に学校現場の声を伺うべく日本のフューチャースクール推進事業の実証校に認定されている山形県寒河江市高松小学校の石澤紀雄教諭にも発表していただくというプログラムを組みました。

 

最初の講演者の赤堀先生からは「次世代を担う人づくりとは」というタイトルで、学校で行われる具体的な事例を交えながら、ICT(Info-Communication Technology、情報通信技術)を活用して教科の学習を促進するとともに、情報を正しく扱う能力と自分で考える力を育てることによって、学力だけでなく人間力をも持った人間の育成の重要性と方向性についての発表をしていただきました。続いて、影戸先生には現在日本で取り組まれている「学びのイノベーション」などのプロジェクト、および海外の事例と世界の動きに関してのお話を伺いました。そして昼食を挟んで午後からは、曺圭福先生と筆者がそれぞれ、国を挙げてフューチャースクール構想を強力に推進している韓国とシンガポールの国家戦略、計画目標および学校での実践例とその課題について報告し、最後に高松小学校の石澤先生が学校での取り組みや教師と生徒達の反応についてさらに詳しく現場の声を届けてくださいました。

 

5名の講演者による講演が終了し、フォーラムはいよいよクライマックスのパネルディスカッションの時間となりました。慶応義塾大学名誉教授の斎藤信男先生によるコメントをいただいた後は、フロアからの挙手と質問が絶えることがないほど熱い議論が続きました。ICTに頼りすぎて児童生徒の五感を刺激し触発することが損なわれてしまうのではないか、歴史、芸術や文化などICTだけでは決して伝えきれない科目の学習が疎かになりはしないか、さらにICTの多用によって人間同士の生のコミュニケーションが希薄になってしまわないか、といった疑問に多くの関心が寄せられました。それらの質疑に対して、ICTの活用が両刃の剣であることを認識しつつ、革新な技術の導入とそれがもたらす変化を恐れずに、フューチャー学校でも「ネイチャー」と「カルチャー」について教える方法を創造的に模索し、また単方向の教授法を改めて学習権を学習者に渡す勇気を持って未来型学校のあり方を考えることが重要なのではないか、などのレスポンスと意見が講師の先生方からありました。(詳しくは近い未来に発行されるフォーラムの正式レポートをご参照いただければと思います。)

 

熱気溢れるパネルディスカッションの次はさらなる熱い夜の懇親会がありました。蓼科の豊かなネイチャーに囲まれ、おいしいお酒と美味なお料理を堪能しながら未来型学校について討論、談笑する皆様の楽しいお姿と笑顔は、学校の未来だけでなく渥美国際交流財団とSGRAの明るいフューチャーを想像させていだだけるものでした。

 

(SGRA「東アジアの人材育成」研究チーム・チーフ)

 

フォーラムの写真は下記URLをご覧ください。

 

ホー ヴァン ゴック撮影

 

尹飛龍撮影

 

 

2012年7月25日配信