SGRAイベントの報告

第7回チャイナフォーラム「ボランティア概論」報告

2013年5月22日、第7回チャイナ・フォーラムが、ついに、北京外国語大学日本学研究センター3階多機能ホールにて開催された。

 

「ついに」という言葉を用いたのは、昨年9月に北京で開催できず、今回まで延期となってしまったので、夢がやっと叶えられたという気持ちが込められているからだ。昨年、開催できなかった理由は周知のとおりだが、5月の開催が急に決まったために、今回のフォーラムの特徴のひとつは短い準備期間であった。ポスターの印刷と掲示が開催一週間前、レジュメの完成が三日前、横断幕の製作が二日前、アンケートの作成が当日の朝、という慌しいスケジュールだった。それでも、フォーラムは無事に終了した。そういう意味で、今までで一番やりがいと満足感を味わったのは今回かもしれない。

 

個人的な感想はさておき、本題に入ろう。

 

東京YMCA同盟の宮崎幸雄名誉主事が今回の講師を務めてくださった。講演のテーマは「ボランティア概論」だ。テーマが幾度か変更されたが、レポートではポスターの通りにする。YMCAといえば、西城秀樹のあの名曲「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」を想起させるが、宮崎先生は日本キリスト青年会(Young Men’s Christian Association)同盟の名誉主事なのだ。しかし、その健やかな姿は、一目見れば、今の西城秀樹でも匹敵できない、と思ってしまうほどだ。

 

講演は、ベトナム戦時下、宮崎先生のボランティア原体験に始まり、養鶏、養豚などの逸話が盛り込まれると、早くも会場にいる人々を釘付けにした。話が近年の災害救援活動とボランティア活動に進むと、より身近に感じられ、阪神淡路大震災、四川大地震、東日本大震災の際、あれだけ多くのボランティアが力を注いだことに、思わず脱帽した。また、四川大地震の後、心のケアに関するマニュアルの日中翻訳作業に取り込んだSGRAも事例として挙げられ、私はその翻訳者の一員として、当時よりも誇らしく思った。

 

阪神淡路大震災以来、また四川大地震以来、ボランティア精神は、徐々に両国で広がり、より多くの若者がボランティア活動に身を投じるようになった。そんな中、宮崎先生は、若者の意識の変化に注目している。阪神淡路大震災のボランティアたちが期待していたのは、非日常的体験、被災者とのふれあい、居場所の発見であったのに対し、東日本大震災の場合、家族の絆、死生観や共生観に関する思考、異文化交流と近代史の学習など、高い次元の精神的ニーズが求められているという。

 

最後に、宮崎先生は、開催地の中国に焦点を絞り、そのボランティア活動の限界と新たな展望について述べた。政府の力が大きい中国では、ボランティア活動もその監督部門の指導を受け、組織的に行われている。それは、全体的に見れば効率がよいというメリットがある一方、一人ひとりの参加者が、自主的に参加するわけではなく、言われたからやっているに過ぎない、言ってみれば、ボランティア活動から得た満足感と達成感が希薄で、一人一人の力も最大限に発揮できないというのも無視できない。
しかし一方、八十年代生まれ、いわゆる八零後世代の人々は、自由で、独立の意志を持ち、自主的に地域社会の一員として権利を行使し、責任を果たす活動を展開している。そういう意味で、近い将来、中国で自主的にボランティア活動やチャリティ事業に従事する若者がどんどん増えていく、と宮崎先生は楽観視している。

 

質疑応答の段階で、ロータリー米山中国学友会の方や北京外国語大学の学生より、コメントと質問を頂戴した。ボランティア活動に止まらず、宮崎先生は、フォーラム終了後もしばらく学生の人生相談相手をつとめられた。

 

来年から、チャイナ・フォーラムは研究者交流へ方向転換する可能性が大きいが、中日外交の行方が不明瞭の中で開催された第7回チャイナ・フォーラムは、きっとわれわれの記憶に焼き付き、忘れられない一回となるだろう。

 

 

(文責:宋剛[北京外国語大学日本語学部専任講師])

 

 

当日の資料は下記リンクよりご覧ください。

 

発表用パワーポイント

 

配布資料(レジュメ)

 

アンケート集計

 

当日の写真を下記リンクよりご覧ください。

 

宮崎撮影

 

今西撮影

 

今回のフォーラムの講演録はSGRAレポート第68号として、今年の秋に発行する予定です。

 

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2013年6月5日配信