SGRAかわらばん

李彦銘「第11回SGRAカフェ『日中台の微妙な三角関係』報告」

7月28日(土)、台風の中で開催された今回のカフェは、テーマが「日中台の微妙な三角関係」であった。カフェの途中から大雨に見舞われ、中庭でのBBQを断念せざるをえなかったが、その分の時間を講演後の質疑応答に回すことができ、濃密な2時間を30人弱という参加者で共有できた。

 

講師を務めたのは、「辺境東アジア」アイデンティティという概念を考案された林泉忠先生(現在中央研究院近代史研究所副研究員)で、元渥美財団の奨学生でもあった。まず、今西淳子代表からSGRAカフェ開催の経緯の説明があった。卒業し各専門分野で活躍している奨学生と気楽にお互いの専門の話を、忌憚なく共有するというのが最初にカフェを開催した目的/きっかけとのことだった。

 

今回の講演のキーワードは「微妙な三角関係」であるが、その「微妙さ」、特に常に日台関係の懸念材料になる「中国要因」をよりよく理解するために、講師はまず歴史、つまり日清戦争の結果としての台湾植民地化から話を始めた。大陸から切り離された台湾島という地域では、大陸と異なるアイデンティティ形成・近代的国民国家(nation_state)を経験していたことが強調された。さらにその後の日中戦争とその結果としての国民党敗北・台湾入りも、大陸の共産党政権に対するイメージ形成、台湾内部の亀裂(本省人・外省人)につながっていったことなど、現在になっても、歴史は相変わらず中・台の異なる対日認識の根源であると言及した。その後は、戦後「日中関係」(日本と中華人民共和国および日本と中華民国)の形成や、日中国交正常化をきっかけに構築された「72年体制」、日中関係における「台湾問題」の歴史変遷を説明しつつ、中国政府が日台関係に常に多大な関心を払う主な要因をまとめた。つまり、中国政府にとっては、台湾はいまだに未統一の領土で、近代国家の建設にとって必要不可欠な一部であり、政権の正統性の中核にも関わる問題である。

 

そのうえで、近年の日台関係の主な動向とその懸念材料になる「中国要因」に話が移り変わり、日中台という三角関係のこれからが展望された。特に2013年以来は、日中関係の硬直化と同時に、日台の政治関係の強化が見受けられた。しかし中国政府は自国の実力増強と共に、一方でかつてほどない寛容な態度を示し、もう一方では注意深い警戒を示し、蔡英文政権により強硬な態度で圧力をかけ続けている。このようなアプローチは、台湾のさらなる日米接近をもたらすだろう。しかし中国政府と日米の政治的約束を破ることも決して簡単ではなく、この「微妙」な関係と複雑な駆け引きは今後も続くという結論にたどり着いた。

 

質疑応答では、もっぱら現実問題に集中していたが、なかでは例えば中国政府による国際社会での「台湾人いじめ」はいつまでなのかなど、専門的な質問というよりは一般人の生活感覚からの質問なども出てきた。このような感覚が生まれたことは、やはり、中国側の政策決定の基盤となる台湾社会への理解が十分ではないことをよく反映しているといえよう。また元外交官や、経済交流の実務家などオーディエンスからも自らの体験・展望が語られ、講師の議論を大変有機的に補完した。

 

その後は、BBQを楽しみながら講師と参加者の歓談がしばらく続いた。SGRAカフェの参加者の数は増えてきたが、多様な知見を気楽に忌憚なく共有するというモットーは、しっかり受け継いでいるようである。

 

当日の写真

 

BBQの様子は下記リンクをご覧ください。
◇趙秀一「真夏のBBQ」

 

<李彦銘(リ・イェンミン)LI_Yanming>
専門は国際政治、日中関係。北京大学国際関係学院を卒業してから来日し、慶應義塾大学法学研究科より修士号・博士号を取得。慶應義塾大学東アジア研究所現代中国研究センター研究員を経て、2017年より東京大学教養学部特任講師。

 

 

2018年9月5日配信