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エッセイ271:孟 子敏「アメリカ印象記(後編)」

やり方は若干変りましたが、アメリカが土地を略奪するのはまだ続いています。それほど多くはありませんが、海外領土も持つようになりました。プエルトリコ自由連合州、直轄領有したミッドウェー諸島などです。 土地を略奪することに止まらず、奪う価値がある有形無形の財産をもアメリカは狙っています。

 

2003年3月20日、アメリカはイラクに侵攻しました。あの戦争の本当の目的は何だったのでしょうか。足を使って考えてみれば(中国語の表現で、頭を使わず、足を使うことを言い、きちんと自分で判断するという意味です)、すぐに分かるでしょう。イラクの石油の採掘可能埋蔵量は世界3位なのです。 アメリカはドルを利用して、世界のお金を略奪しています。中国は大量のアメリカ国債を保有しており、ドル安の関係で、2ヶ月間に、数百億のドルを失ってしまったという情報が、ある国債管理局の官吏の口から伝わってきました。日本もアメリカ国債の保有量が2番目ですから、その損失は一体どうなるのでしょう。もちろん、国債を買うのは中国や日本が責任をもって戦略的にしていることで、アメリカの責任は全くないという解釈もありますが、中国では、アメリカの圧力を受け、国債を買わねばならなかったと考えている人も多いです。 アメリカは他の国の頭脳を略奪して、独自の規範を考えさせないのです。もし誰かが、アメリカが作ったルールを守らなければ、すぐ教示したり、威嚇したりします。しかし、アメリカ自身は、すべてのルールを無視しても良いのです。

 

参考として私の言葉をここで提示したいと思います。「ルールを作った人や国は、最もルールを守らないものだ。」(これも名言ではないかと考えています。)この現象は、アメリカに限らず、私たちの身近にも見られます。 また、アメリカは他の国の人々の感情を略奪して、ひとつの民族を分裂・分断させてしまったりもします。そのような民族は、様々なトラブルに遭遇し困りぬいて、今でも苦しい状態に置かれているのです。 3.理知的な国 アメリカ式の理知とは、どのようなことでも、事前に必ず証拠を探します。証拠がなければ証拠を作っていくのもひとつの理知です。だからこそ、アメリカ政府は嘘を証拠として扱いアメリカ国民や各国の人々を騙して、度々成功してきています。 イラクへの侵略について、その時に作った理屈や証拠はイラクが大量破壊兵器を保有していることでした。アメリカ国民はそれを信じていました。しかし、皆さんご存知のように大量破壊兵器は一体どこにあったのでしょうか。あの時、我々は言葉を失い、世界は失語症になってしまいました。アメリカ自身がこの件が間違いであったことを認めたわけで、そのこと自体はアメリカの凄さだと私は思っています。然し、それは遅過ぎました。

 

トヨタ自動車のアメリカでの故障について、アメリカは証拠を見つけて、豊田さんを議会公聴会へ呼びつけて証言させました。この背景は、要するに次のようなことでしょう。アメリカ人が日本車を愛用するため、日本車がよく売れ、アメリカの自動車産業へ悪い影響を与えて深刻な衰退を引き起こしました。したがって、トヨタは叩かねばならないという構図です。しかし、この問題と自動車そのものとは、本質的な関係は無い筈です。どこかのメーカの自動車を非難したければ、証拠探しは比較的簡単にできるでしょう。なぜトヨタが標的にされたかというと、日本車がアメリカの自動車の半分を占めていて、その中で、トヨタが最も多いからなのでしょう。ちなみに、私が住んでいるマンションの駐車場には26台の車が停められています。ある日の私の調査によれば、トヨタが7台、ホンダが4台、ニッサンが2台、スバルが1台、マツダが1台でした。

 

これはやはり一種のビジネスの“戦争”だと思います。 4.結論 アメリカという国は、良い国でもあり、悪い国でもある。 アメリカという国は、天国でもあり、地獄でもある。 アメリカという国は、あなたの友人でもあり、敵人でもある。 アメリカという国は、アメリカ人にとって最も安全な国であり、世界各国の人にとっては最も危ない国になりかねない。 私は反米派でも、親米派でもありません。アメリカは偉い国ですが、中国で普段言われているほど特別に賛美する必要はないと思います。世界がアメリカをちゃんと分かるように、アメリカの弱点も明言しなければなりません。アメリカには、良いところもいっぱいありますが、理想的な国ではないと思います。日本にも、さまざまな問題がありますが、大きく言えば、理想的な国だと私は思います。

 

あー!うどん、寿司や刺身が食べたい、池内商店や夢中居に飲みに行きたいし(友人と一緒によく飲みに行くところでしたが、夢中居の主人は先月急逝され、二度と飲みに行けなくなってしまいました)、周平ラーメンを食べたいし、家族や友達とも会いたくて、日本へ帰国する日を待ち望んでいます。松山の自分の一軒家はもうすぐ落成します。新車も買います。こんどもやはりトヨタです。 5.余言 この一年間、Comcast.netを利用してインターネットにアクセスしていますが、数十回もトラブルが発生しました。このサービスについて、褒める言葉は探しにくいと思います。John’s Auto Sales で中古車を買いましたが、アメリカ大陸を横断する途中でエンジンは完全に壊れてしまいました。一体どのようなサービスだろうかと疑問視せざるを得ません。 「アメリカは、いつまでもナンバーワンだ」という何の内容もないスローガンがオバマ大統領の大きな口から出てしまいましたが、反面、アメリカはナンバーワンを維持する自信が不十分なのではないかと思います。アメリカは軍事力以外にナンバーワンがないのではないでしょうか。 もうすぐ夏も終りますが、アメリカ、少なくともボストンには、蝉がいないことに気づきました。 ハーバード大学やアメリカの学界については、稿を改めることにしましょう。

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<孟子敏(もう・しびん)☆ Meng Zimin>

山東大学(学士・修士)。北京言語学院準教授、北京語言文化大学学術委員会事務局長等を経、松山大学に外国人特別講師として赴任。筑波大学で博士号取得後、松山大学教授。専門は現代中国語。

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2010年11月24日配信