SGRAかわらばん

マキト「京都議定書批准時の外交努力を思い出そう」

SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ
フェルディナンド・マキト

 

緊迫した最近の政治情勢のなかで、父親のブッシュ政権における湾岸戦争と、その時の日本の悔しい思いがよく取り上げられる。しかし、私はむしろ京都議定書の批准と、その時の感動的な日本の外交努力を今こそ思い出したい。

 

当時の様相はこうだった。米国が京都議定書に批准しないことを決めて、国際社会の合意にストップをかけようとしていた。日本は議定書の運命に対して決定的な票を握っていた。日本は、議事国らしく見事にその困難な問題を解決した。世界環境だけでなく、世界の秩序そのものに最も影響力のある米国に、できるだけ批准するように働きかけた。米国が決意を変えようとしなくても、日本は米国に束縛されず、京都議定書に批准し、国際社会の決定を維持した。内容をみると、エネルギー資源に乏しい日本は、聖域であった原子発電所においては譲ったが、森林が豊富な日本は、森林の重要さを議定書に盛り込むことに成功した。

 

今の様相はこうみえる。米国は国連の決議に従わないという強い信号を発信している。単独の軍事介入によってでも、イラクの武装解除を実施しようと宣言している。投票権がなくても日本はこの中で、事実上国連の運命に対して決定的な決断に迫られている。果たして、日本は、平和憲法を持つ唯一の先進国らしく、見事にこの困難な問題を解決できるだろうか。

 

どのような外交が水面下で行われるかは、そのうち歴史が語り裁くが、普通に考えれば、京都議定書が試したいくつかの要素があれば、悪くない結果を生み出すであろう。まず、従おうとはしない米国に対してできるだけ働きかける。しかし、米国が決断を変えようとしなければ、日本が国際社会の決定を支持するのは当然であろう。日本が譲れるところは色々と考えられるが、この地域の平和に重要であるものの行き詰まった平壌宣言にヒントがあるであろう。活かすべきことは、日本が豊富に持っている平和理念にほかならない。

 

あくまでもこれは私の期待だったが、京都議定書批准において活躍した川口大臣が、今回も活躍しているのはわずかな希望を抱いた。しかし、日本は、国連で否決されても米国を支持すると腹を決めた。

 

今年の日本の建国記念日に、小泉総理大臣が鋭く指摘したように、最近日本では悲観的な見方が支配的であるが、本当に強いところはまだまだたくさんある。その強さを見失った世論が間違っているといえようが、国民の反対の声に聞く耳を持たないわけにはならないであろう。根っから親米の小泉総理やその周辺の政治家は、本来日本にある強さ、そして米国が掲げている、本来、社会の合意を徹底的に維持する真摯かつ偉大なる民主主義を国際舞台で生かすことはもはやできないのか。

 

あの感動的な外交努力を、もう一度、平和を愛する日本の国民、いや平和を愛する地球市民に示してほしかった。

 

追記:アメリカの大学に勤める者として、少しでも生徒と教員の安全に貢献したいと思い、この文章を投稿します。