SGRAイベントへのお誘い

第30回SGRAフォーラム「教育における『負け組み』をどう考えるか」

第30回SGRAフォーラム
教育における『負け組み』をどう考えるか
~ 日本、中国、シンガポール ~

 

■日 時:
2008年1月26日(土)
午後2時30分~5時30分 その後懇親会

 

■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟G610会議室

 

■フォーラムの趣旨

 

SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームが担当する6回目のフォーラム。グローバル化の中で、漢字文化圏を中心に教育の大競争が起きている。激しい受験戦争に勝つのはほんの一握りの人たちであり、不利な立場に立たされた「負け組み」はどうなるのか。教育こそが下から上にあがるための武器となるべきものであるのに、それが機能しているだろうか?このような問題意識を持ちながら、日本、中国、シンガポールの教育事情を紹介し、教育格差の問題にどう取り組めばよいのかを考える。100人いれば100の教育論があると言われるが、このフォーラムではデータに基づく研究を紹介していただいた後、皆さんと一緒に教育格差の問題を考えたい。

 

■プログラム

 

詳細は下記URLをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/forum30program.doc

 

【発表1】佐藤 香
(東京大学社会科学研究所准教授)
「日本の高校にみる教育弱者と社会的弱者」

 

日本の教育システムの特徴の一つに、高校・大学におけるきわめて精密な序列化があげられる。とりわけ高校は、教育だけでなく研究や規模・学費など多様な要因から評価される大学とは異なり、学力のみによる一元的な階層構造を形成している。この階層構造を支えているのは、教育機会の均等とメリトクラシー(業績主義)という2つの前提である。そのなかで、高校生たちは、在籍している高校の階層に適応した進路、すなわち進学校であれば威信の高い4年制大学、普通科中堅校であれば中堅大学や専門学校、普通科下位校や専門高校であれば就職といったように、特定の進路に強く水路づけられてきた。また、それぞれの高校には、それらの進路とも結びつくような独自の生徒文化が存在した。
けれども、1990年代なかばからの長期にわたる経済不況によって高卒労働市場が著しく縮小したためもあって、従来、就職をおもな進路としてきた高校では、生徒の進路保障が困難になった。その一方で、教育システムの外部では社会・経済的な格差が拡大してきている。こうしたなかで、社会・経済的な弱者が教育弱者になる傾向が強まりつつある。
報告では、東京近郊にあるA県の公立高校のデータをもちいて社会的弱者と教育弱者との結びつきをみたうえで、それの問題点を指摘する。さらに、教育機会の均等とメリトクラシーという、日本の教育システムにおける2つの前提についても、会場の皆さんと再考してみたい。

 

 

【発表2】 山口真美
(アジア経済研究所研究員)
「中国の義務教育格差~出稼ぎ家庭の子ども達を中心に~」

 

経済発展が進み、教育の役割がますます大きくなる中国で、制度的に教育機会を奪われている子ども達がいる。都市に住む出稼ぎ労働者の子ども達である。彼らの多くが都市生まれだが、学齢に達しても都市の学校は彼らを無条件では受け入れない。出稼ぎ労働者の多くが子どもの将来に希望を託し、教育を重視しているにもかかわらず、子どもの教育機会は義務教育の入り口で大きな壁につきあたっている。
報告では、この背景にある中国の教育制度と社会制度の問題点を考え、それに対する草の根と政府それぞれの取り組みを紹介する。義務教育における教育格差の問題について、皆さんと共に考えてみたい。

 

 

【発表3】シム・チュン・キャット
(東京大学大学院教育学研究科博士課程)
「高校教育の日星比較~選抜度の低い学校に着目して~」

 

どこの国でも、学校教育段階のどこかで何らかの基準をもとに、生徒を「分化」しなければならない。分化の仕方はさまざまであり、アメリカの高校のように学校内に分化したコースを設ける場合もあれば、多くのヨーロッパの国やシンガポールに見られるように進路によって学校が分かれる場合もある。さらに、日本の高校のように学校間格差という形で生徒をふるい分ける国もある。形態はともあれ、生徒の分化における一番の問題は、下位の学校やコースに振り分けられた、いわゆる「負け組み」の生徒の「やる気」や意欲をいかに保つかということである。この点において日本とシンガポールとでは大きな違いがあり、その違いを浮き立たせることが本報告の主眼パネル

 

■オープンフォーラム

 

進行:孫 軍悦
(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
パネリスト:発表者全員