SGRAニュース

  • 第2回日韓アジア未来フォーラム「動揺する日本の神話」

    2002年7月19日(金)午後8時半より、SGRA/渥美国際交流奨学財団と韓国の21世紀日本研究グループ/財団法人未来人力研究院の共同プロジェクトである、第2回ワークショップ「動揺する『日本の神話』」研究フォーラムが、軽井沢の鹿島建設研修センターで開催されました。 このワークショップは、戦後日本の様々な「成功神話」がどのような過程を経て「失敗神話」に転換したのか、また現在進められている一連の改革を通じて現れる日本の姿はどのようなものであるかについて包括的に捉えるために企画された。このような認識のもとで日本の過去と現在、そして未来を説明できる一貫した枠組みを構築し、主要分野を検討した。ここで取り上げられた分野は日本の対外政策、政治経済、教育、情報化、環境の五つである。朴栄濬氏(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)の司会、南 基正氏(東北大学大学院法学研究科助教授)を座長に、下記の研究発表があり、活発な意見交換が行われました。 フォーラムには渥美財団の奨学生、元奨学生に、渥美理事長、未来人力研究院の宋理事長、翌日開催される第8回SGRAフォーラム「グローバル化の中の新しい東アジア」の講師、平川先生、ヴィりエガス先生、ガト先生方も参加してくださり、研修室が満席になる盛況で、参加者はさまざまな角度から「動揺する日本の神話」について熱心な議論が交わされました。また、このフォーラムに関心を持ってくださった朝日新聞アジアネットワークの村田記者に取材をいただいた。
  • 第7回フォーラム「地球環境診断:地球の砂漠化を考える」報告

    2002年5月10日(金)午後6時半から8時45分まで、有楽町の東京国際フォーラム610号室にて、第7回SGRAフォーラム「地球環境診断:地球の砂漠化を考える」が開催されました。今回は、地球環境破壊、特に砂漠化(沙漠化)について、二つの対照的な研究、衛星写真情報の利用という大規模かつ最新鋭の理工学的研究と、現場のフィールドワークという地道な人文科学的研究が、約50名の参加者に紹介されました。   まず、千葉大学環境リモートセンシング研究センター助教授の建石隆太郎博士より、「衛星データから広域の砂漠化を調べる」というタイトルで、様々な衛星画像データを紹介しながら、砂漠化とは何か、衛星データによるリモートセンシングの基本、衛星データによる砂漠化調査の方法、砂漠化地図化などについて、わかりやすく解説していただきました。そして、この研究は、重要な環境問題の一つである砂漠化の現状を、衛星データを利用してなるべく正しく把握することであり、各国の衛星によるデータをあわせて、より総合的に砂漠化を把握する国際的共同研究も進められていること、砂漠化を正しく把握するためには、どんなに高精度であっても衛星データだけでなく、地上の正確な地図、そして現場での実地調査が必要であり、広範囲な学際的研究が求められることを説明してくださいました。   次に、SGRA研究員で、日本学術振興会外国人特別研究員・早稲田大学モンゴル研究所客員研究員のボルジギン・ブレンサイン博士から「フィールドワークでみる内モンゴルの沙漠化」というタイトルで、20世紀前半の満州国文献における内モンゴル地域の実態調査報告書の分析、追跡調査の結果、内モンゴル東部地域における農地化によって、いかに沙漠化が進んだかという研究を発表してくださいました。無理な開発と農業中心主義政策によって開墾が拡大され、ステップの保護層としての表土が傷められて、風化が進み、農業も牧畜もその存続すら危ぶまれる窮地に至っているというお話に、参加者はあらためて砂漠化の深刻さを認識しました。   その後、限られた時間でしたが、SGRA「環境とエネルギー研究チーム」の高偉俊チーフ(北九州市立大学国際環境工学部助教授)の司会により、建石先生とブレンサインさんのおふたりに対して、質疑応答が行われました。今年は、北京やソウルがひどい黄砂の嵐にまきこまれ、北海道にも降って、中国内陸部の砂漠化が、より身近な問題として感じられたこと、地球の砂漠化に対する総合的な政策は殆ど発表されたことがないこと、内モンゴルの砂漠化がカシミヤ山羊の飼育や髪菜という珍しい食材の乱獲などが原因となっており、知らないうちに、私たちの日々の暮らしにも関連していること、などが指摘されました。そして「では、明日からもっと明るい気持ちで生きていくにはどうすれば良いでしょうか」という質問に、ブレンサインさんは「内モンゴルに旅行して、その土地の習慣や文化を知ってください」と答えました。   (文責:今西淳子)
  • 第6回フォーラム「日本とイスラーム:文明間の対話のために」

    2001年12月21日(金)午後5時半から8時まで、東京代々木上原のイスラム教モスク、東京ジャーミイにて、第6回SGRAフォーラム「日本とイスラーム:文明間の対話のために」が開催されました。参加者は、まず、SGRA研究員で東京ジャーミイ副代表のセリム・グランチさんの案内で、礼拝堂を含む施設の見学をしました。その後、1階の多目的ホールにて、東京ジャーミイ代表のジェミル・アヤズ様とSGRAを代表して今西から挨拶があり、次に、セリムさんより、9月11日のテロ事件後、たくさんの報道人がインタビューにやってきたが、イスラムについて極めて限定的な知識しかもっていなかった。そこで「日本人の皆さんが人間を磨くために考えることは、ほぼイスラームの基本的な概念をなしている」と申し上げた、という短いコメントが披露されました。 講演会では、日本のイスラーム学の権威、東京大学名誉教授の板垣雄三先生のお話を伺いました。先生は、まず、日本はイスラームを遠ざけて見ようとし、イスラーム世界は日本に親近感を抱いているが、何故そうなったのかという問題を提起されました。イスラームは、本来、宗教や文化の異なる多様な人々が共生し取引する「都市」を生きる生き方を教えてきた。このイスラームの多元主義的普遍主義に対して、欧米は、欧米対イスラームの対立にこだわり、イスラームを敵と決め付ける文明衝突論の伝統を抱えてきた。イスラーム世界の人々にとっては、欧米諸国に双肩する日本は憧れでもあり親しみも感じている。 一方、欧米のメガネを借りた日本人のイスラーム感は、しばしばこの思いを裏切る。正倉院御物の中にも見出されるように、日本とイスラーム世界との繋がりは非常に古い。また、現在の日本人は、日本の経済的繁栄の土台である化石燃料が、あたかも自動的にもたらされたもののように勘違いしている。日本社会は、イスラーム世界の日本に対する好意的な心情が、日本にとってかけがえのない資産だということに気づかなければならない。 イスラーム文明は、近代欧米文明の源泉である。日本の知識人がイスラームへの無知を口にするのは、実はよく知っていると思っている欧米への無知を告白しているにすぎない。世界人類を巻き込む現在の危機において、日本は欧米を通したイスラーム感から離脱し、日本独自の役割を演じなければならない。「多元的な都市」を生きるイスラーム文明本来のメッセージを評価して、イスラーム世界と文明的協力を進めていかなければならない、と訴えられました。 その後、限られた時間でしたが、板垣先生とセリムさんのおふたりに対して、質疑応答が行われました。そして、トルコ料理の懇親会においても、おふたりの講師の先生は、参加者の熱心な質問に答えていらっしゃいました。雪まじりの雨が降る生憎の天気でしたが、トルコのお茶サーラップに始まったSGRAフォーラムに参加した76名の参加者は、温かくて明るいモスクの中で、イスラームの夕べを楽しみました。 (文責:今西)
  • 第5回フォーラム「グローバル化と民族主義:対話と共生をキーワードに」

    2001年10月1日(月)午後6時半~8時45分、東京国際フォーラムガラス棟402会議室にて、SGRA第5回研究会「グローバル化と民主主義:対話と共生をキーワードに」が開催されました。46名の参加者は、まず、9月11日にニューヨークとワシントンで起きたテロリストの攻撃の犠牲者とその家族に黙祷をして追悼の意を表しました。 その後、チベット文化研究所のペマ・ギャルポ所長が「民族アイデンティティと地球人意識」というタイトルで、「肌の色や宗教が違っても、人間は同じなんだ。」という、ご自身の体験に基づいた信念を迫力ある語り口でお話しくださいました。文革が終わり、一掃されてしまったチベット語の教師を外国から送り込むことになった時、その人たちを教育して、いつでも蜂起できるようにしよう、という提案に、ダライ・ラマ法皇はとても悲しい顔をされて、「私達が暴力で訴えたら、どうして中国政府を批判することができるだろう」とおっしゃった、というエピソードなどは、仏教の教えに根ざした平和主義の力強さを伝え、聞く者の胸に迫りました。多様な人々が共存していくためには、やはり普遍的な価値を確認しあうことが必要である。幸いにも、基本的人権など、それは国連憲章で定められている。しかしながら、そのような普遍的価値を押し付けるのではなく、相手に悟らせる。誰にも押し付けられなかったのに、文化や宗教が違っても、徐々に、たくさんの人が洋服を着るようになったように。少しずつ説いていけば、チベットのことを海外の人々が応援してくれるようになり、そして今は情報が限られている中国の一般の人たちの中にも応援してくれる人がでてくるようになり、やがて民族同士が対立するのではなく、お互いの文化や宗教を尊敬しあいながら、共存していくことができるようになるだろうと信じている、というお話は、「地球市民の実現」をめざすSGRAにとっても、とても力強い応援歌でありました。 次に、香港から参加した東京大学法学研究科在籍でSGRA研究員の林泉忠さんが、「北京五輪と『中国人』アイデンティティ:グローバル化と土着化の視点から」と題してお話しくださいました。林さんは、まず、中国本土は「強い期待→大喜び」、香港では「まぁいいんじゃない→商機への期待」、台湾では「どうでもいい→台湾への影響を心配」、海外華人はさまざまと分類した後、1980年代半ば以降の「中華世界」アイデンティティの多様化を分析しました。そして、中国本土のナショナリズムの増強と本土以外の土着意識の顕在化から、「大陸」と「非大陸」へ二分化されていることを指摘しました。オリンピックの北京開催によって、大陸では①求心力の強化に一定の効果があり②台湾・香港への姿勢も強まる可能性もあるが、③今後の経済発展の持続と中央統制力の維持ができるかが鍵となるだろう。一方、非大陸では①五輪のみで中華世界の求心力が急速に強まることはなく②大陸の国力の増強が構造的に求心力を強める方向に導くが③キーポイントは大陸への政治帰属意識が増強できるかどうか(つまり大陸の民主化が進むかどうか)ということだという結論を導きました。 その後、SGRA地球市民研究チームの薬会チーフの司会で、フロアーとの質疑応答が為され、第5回研究会も盛会のうちに終わりました。 (文責:今西淳子)
  • 第4回フォーラム 「IT教育革命:ITは教育をどう変えるか」

    2001年7月20日(金)、東京国際フォーラムガラス棟409会議室にて、SGRA第4回研究会「IT教育革命:ITは教育をどう変えるか」が開催されました。今回は、(財)鹿島学術振興財団と(財)東京国際交流財団から助成をいただき、休日(海の日)の午後を使って、シンポジウム形式で行いました。9名の発表者からITを利用した教育現場の最新動向の紹介があり、80名を越す参加者は、教育におけるITの可能性と問題点を考えました。 最初に、NECのeラーニング事業部の臼井武彦氏が、eラーニングの実例を紹介しながら、「いつでも・どこでも」の利便性、社員全員への一斉教育が可能、コスト削減など、その利点をわかりやすく説明してくださいました。また、eラーニングは、まだ始まったばかりだが、今後急速に発展するだろうと予測されました。 次に、鹿島ITソリューション部の西野篤夫氏より、マサチューセッツ工科大学(MIT)のIT教育戦略についてお話いただきました。時代の先駆者を自認するMITでは、ITが高等教育に及ぼすインパクトに注目、「教育はビジネス」という考え方に基づき、遠隔教育による講義配信、マルチメディアを利用した教材製作、教育支援システムの開発などが、全学プロジェクトとして推進されている様子をご紹介いただきました。 在日のSGRA研究員4名は、自分自身が携わっているITを利用した教育について発表しました。ブラホ・コストブ氏(都立科学技術大学博士課程)は、同学とスタンフォード大学で行っている協調機械設計授業(紙で自転車を作る・縦列駐車の支援システムの開発)の紹介をしました。フェルディナンド・マキト氏(テンプル大学ジャパン講師)は、自分自身が行っているオンライン教育の体験をもとに、1と0の概念を用いながら、私達の身近なデジタル・ディバイドの克服方法をわかりやすく話しました。ヨサファット・スリスマンティオ氏(千葉大学博士課程)は、インドネシアの状況を紹介した後、自分自身が行っているバンドン大学へのオンライン授業の体験から、今後の様々な課題を指摘しました。蒋恵玲さん(横浜国立大学博士課程)は、上海交通大学の遠程教育センターで、どんどん進められている市内アクセスポイントを使ったオンライン教育を紹介しました。 休憩の後、台北から来てくださった台湾国立中央大学の楊接期氏から、国家からの支援を受けて進めているバーチャル教育都市「Educities」の紹介がありました。30個ものサブ・プロジェクトからなり、50名を超える共同研究という大規模な計画ですが、時間が足りなくて全体像をご紹介いただけなかったのが残念でした。ソウルから来てくださった韓国通信政策研究院の李來賛氏は、ブロードバンドとワイヤレス・インターネット(携帯電話など)の発展を分析した後、デジタル・ディバイド克服のために政策が大事だということを説明しました。 最後に、慶應義塾常任理事の斎藤信男教授から、「ITは教育にも変化をもたらす事ができるであろうか」というお話がありました。ITの適用によって①教育の生産性が向上するか②新しい教育方法・活動が実施できるか、ということを考えました。そして、慶應義塾大学がアジアの大学と始めた国際的教育への取り組みを紹介し、今や教育の大競争時代に突入していると結論づけられました。そして、私達はITの可能性を信じ、ITが真に人類にとって有効に働けるように努力していきましょうと宣言されました。 短い休憩の後、施建明さん(東京理科大学助手)の進行で、9名の講師のパネル・ディスカッションを行いました。フロアーからだされた質問に、講師の皆さんは丁寧にお答えいただきました。酷暑の中で、午後1時より開催されたSGRAの初めてのシンポジウムは、午後6時半、予定通り、盛会の内に終了しました。 (文責:今西淳子)
  • 第3回フォーラム「共生時代のエネルギーを考える:ライフスタイルからの工夫」

    2001年5月30日(金)午後6時半~8時45分、東京国際フォーラムガラス棟402会議室にて、SGRA第3回研究会「共生時代のエネルギーを考える:ライフスタイルからの工夫」が開催されました。50名を越す参加者は、講演者の用意したたくさんのスライドを見ながら、ライフスタイルという身近な切り口から環境問題を考えました。 最初に、早稲田大学理工学部の木村建一名誉教授が「民家に見る省エネルギーの知恵」についてお話しくださいました。木村先生は、持続可能な建築を考える上で、民家の環境に適した美しさ<環境美>を強調されました。断熱と気密化で住宅の暖房エネルギーは1/10にすることができるが、問題は夏の住まいだと指摘され、世界各地の民家の美しい写真をたくさん見せてくださいました。そして、民家には蒸発冷却・大気放射冷却・地中の恒温性利用、加湿冷却、天井扇など、「涼房」と名づけることのできる様々な知恵が見られ、機能と調和した美しさを備えた民家には建築の本質があるとされ、民家技術の現代的適用として①形態と気候風土と②社会情勢の変化に適応していること、③材料の再利用、④(自動ではなく)人動制御、⑤設計の態度を改めること、が大事であると提案されました。また、これからの建築は、①化石燃料を使わない②工夫の心をもつ③地域性をいかす④建物は生き物と認識することが大事であり、伝統的民家こそ環境にやさしい建築である、今後の建築はもっと「民家に見る知恵」を学ばなければいけないと主張されました。 次に、北九州大学助教授でSGRA研究員のデワンカー・バート氏は、「ドイツのエムシャー工業地帯の再生プロジェクトから学ぶこと」という演題で、ドイツ人の環境保全の意識について講演しました。デワンカー氏は、まず、緑がいかに大切かを説明し、工業地帯の再開発では、屋上や駐車場の地面にまで緑を生やしてあったり、太陽電池のパネルが並んでいる様子を見せてくださいました。ビートルスの60年代からドイツの若者は環境破壊的な政策に反対運動を続け、石炭の利用は殆どなくなり、原子力発電を停止することが決まった。そして、自然エネルギーの利用として、風力発電が開発されたが、既にドイツの若者は、風車という人工物を作ることに反対を始めている。だから、何が良いかはまだ誰もわからない。でも、こうして自然資本を生かした世界を生み出していく努力が必要であり、そのために「ALL YOU NEED IS LOVE.」であると結論づけました。 最後に、同じく北九州大学の助教授でSGRA研究員の高偉俊氏は、「都市構造とライフスタイルの変化による省エネルギーの効果」という講演の中で、人口の多いアジアの特性と経済の発展をデータで示した後、コミュニティーを重視したライフスタイルへの変化と、都市を高層化して地域化し、緑と水でネットワーク化したクラスター化が必要であるとの提案をしました。「マイホームからマイルームへ」、外食の薦め、コミュニティーセンター活用など、具体的な提案はとても刺激的でした。 その後、短い時間でしたが、いくつかの質疑応答が為され、デワンカー氏の「できることから始めなければいけない」との力強い宣言をもって、第3回研究会も盛会のうちに 終わりました。 (文責 今西)
  • 第2回フォーラム「グローバル化のなかの新しい東アジア:経済協力をどう考えるべきか」

    2001年2月9日(金)午後6時半~9時、東京国際フォーラムのガラス棟402会議室にて、SGRA第2回研究会が開催されました。約40名の参加者は、「グローバル化の中の日本の独自性」研究チームが担当で、ODAを中心に、アジア通貨危機以後の東アジアの経済協力はどうあるべきかということを考えました。最初の講演は、名古屋大学経済学部付属国際経済動態研究センターの平川均教授の「グローバル化とリージョナリズム:東アジアの地域協力は何故必要か」。平川先生は、アジア通貨・経済危機について、その責任はアジアの内的要因に問題がないわけではないが、責任はより大きく、市場の自由化を推奨した米国、IMF、世界銀行などの先進側にあると主張しました。そして、無秩序なグローバル化の制御に向けたひとつの対応策としての地域協力が不可欠であり、リージョナリズムがアジアにおいて急速に展開されていると指摘。今後の目標として、アジアを共生の地とする思想、互いの文化や伝統の尊重、時間の観念を加えた構造転換を提言しました。 次にアジア21世紀奨学財団の角田英一常務理事が、ASEAN中堅官僚研修プログラムを担当している経験に基づき、アジア通貨危機のIMF主導の解決策への反発から、日本型経済発展モデルの研究熱が高まったことを指摘しながらも、汚職・癒着・縁故主義(インドネシア語でKKN)がはびこる限り、経済は歪められ、阻害された国民の無力感、国家への不信感を生み出している。このアジア的風土をどう改革するかが大きな課題であると強調しました。マキトSGRA研究員は、最近の新聞記事のODA削減に関する議論等を引用しながら、「自助努力を支援する」という日本ODAの理念<要請主義・円借款・非干渉主義>について検討し、数の議論に偏らないで、日本ODAの理念がせっかく持っている強いところを生かし、「質」の改善をさらに図るべきだと提言しました。 最後に、李鋼哲SGRA研究員は、日中両国民の相手国に対する意識調査など、たくさんの資料を示しながら、ODA削減議論を中心とした日中経済協力について説明し、中国経済はテイクオフし既に自立発展が可能な段階にあるので、ODA削減は妥当であると結論。さらに日中経済協力の今後の課題として、歴史問題に区切りをつけること、草の根(NGO)・環境協力・貧困扶助を重視すること、経済協力は政府間から民間へシフトすること、日中が両輪となって東アジアの経済発展を進めていくこと等を提言しました。その後、短い時間でしたが、いくつかの質疑応答が為され、第2回研究会も無事、盛会のうちに終わりました。 (文責:今西)
  • 設立記念講演会:船橋洋一「21世紀の日本とアジア」

    2000年7月26日午後6時から8時20分まで、関口グローバル研究会(Sekiguchi Global Research Association, 略称SGRA)設立記念講演会が慶應義塾大学三田キャンパス北新館2階ホールにおいて行なわれた。李恩民実行委員が司会を務め、最初に今西淳子代表から開会の挨拶として研究会設立の経緯を説明した後、F・マキト運営委員と嶋津忠廣運営委員がそれぞれ当研究会の趣旨、2000年度研究プロジェクトの概要について解説した。続いて「グローバル化と地球市民意識の国際比較」研究プロジェクトのチーフである薬会研究員が、学習院女子大学・台湾輔仁大学・上海大学で実施した「地球市民」認識度アンケート調査を具体的事例研究として報告した。開会して30分後、朝日新聞コラムニスト(編集委員)船橋洋一氏がゲスト講師として演壇に立って「21世紀の日本とアジア」とのテーマのもとで次のような課題について辛口で講演した。(1)沖縄サミットの本意は中国・インド・インドネシア・韓国の首脳を招いた上でアジアの声を反映させることにあったが、実際はアジアの問題をあまり取り上げていないし、アジア諸国の声も反映できなかった。(2)同サミットにおいて基地問題についての解決の糸口さえも示していないから、日米間の不均衡な関係は引き続き維持されていく。この問題を解決しない限り、日本の「不沈空母」という役割は終わらないだろう。(3)日本は地理的にアジアにあり、上海などに近いが、21世紀には心も近づかなければならない。そのために「隣交」――近隣諸国との関係の飛躍的発展・強化――という外交を積極的進めるべきであると提言する。(4)以前の日本の大企業家は一国に依拠しながらも世界への発信を構想していたが、情報社会にもかかわらず、現代の日本の起業家は逆に国内ビジネスだけで手一杯で、世界への発信がなかなかできない。(5)アジア諸国は目覚しい経済変化と社会進歩を遂げつつある。経済面において日本がリードするアジアはすでに変わり、IT革命の領域においてシンガポール、台湾、香港、韓国等はめざましく発展しているし、インド・中国の技術者が世界中で活躍している。このような情勢の中で「隣交」外交がいっそう必要となる。上記のほかに船橋氏はまたハイテクの進展と戦争の解決問題、国際関係とテロ対策問題、朝鮮半島の情勢、北朝鮮のテポトン発射と日米安全保障、日韓間歴史問題の区切りなどについても熱く語った。設立記念講演会には渥美伊都子渥美国際交流奨学財団理事長、渥美直紀鹿島建設専務取締役、加藤秀樹構想日本代表をはじめ、SGRA会員、留学生、NGO団体代表及び一般参加者、慶應大学大学生・大学院生など約百名が出席した。明治維新以来、多くの日本人の心は欧米にあったが、地理的にはアジアにあり(In Asia)引っ越すことはできない。世界の人々にもっとアジアを知ってもらうには日本はアジア諸国と連携して、その一員として発信しなければならない(Of Asia)それを実現させるためには、「隣交」――目覚しい経済変化を遂げつつある近隣諸国との協力・発展を積極的に推進しなければならない。日本だけのことを考えていればよかった、いわば「一国平和主義」の時代はすでに終わった。今や21世紀はアジアの「全体的平和主義」を考えなければいけない時代に入ったと思う。こういう意味で言えば、グローバル化が進む現在において、船橋氏の問題提起や分析の視角は、若い研究者の私達にとっては、とても刺激的・啓発的であった。SGRA若手研究者は、この考え方に沿って研究と提言活動を展開していこう。(文責:李恩民)
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