SGRAイベントの報告

第8回日韓アジア未来フォーラム・第34回SGRAフォーラム「日韓の東アジア地域構想と中国観」報告

2009年2月21日(土)、東京国際フォーラムで「日韓の東アジア地域構想と中国観」をテーマに第8回日韓アジア未来フォーラムが開催された。前回のグアムフォーラムにおいて「東アジア協力」と「ソフトパワー」というキー概念を念頭に置きながら、中国に対する見方の日韓の差に注目し、今後具体的に検討していくことにしたのを受けて、今回のフォーラムでは、日韓の東アジア地域構想について比較の視座から考えてみることにし、その大きなポイントとなる中国観の日韓における相違などについて検討する機会を設けた。

 

フォーラムでは、今西淳子(いまにし・じゅんこ)SGRA代表と韓国未来人力研究院の李鎮奎(イ・ジンギュ)院長による開会の挨拶に続き、4人のスピーカーによる研究発表が行われた。まず 名古屋大学の平川均(ひらかわ・ひとし)氏は20世紀から現代までの日本における主なアジア主義について思想と実態とに分けてその特徴を明らかにした上で、昨今の東アジア共同体ブームに関連して、現在が歴史の再現ではないことを力説するとともに、日本の東アジア共同体構想に対する立場は米国配慮と中国牽制であるとした。延世大学の孫洌(ソン・ヨル)氏は、韓国の地域主義について「東北アジア時代構想」と「東北アジアバランサー論」を主な事例として取り上げながら、地域の範囲、性格、アイデンティティ、方法論の側面から日本や中国のそれとの違いを明らかにした。そしてミドルパワーとしての韓国のバランサーとしての役割を強調した。東京大学の川島真(かわしま・しん)氏は「日本人の中国観」について、これまでの日本の対中観を歴史的な経緯や、近30年間の調査結果、そして昨年の状況などについて概括した。とりわけ、東洋/日本/西洋という三分法の下にあった日本の中国観は戦後日本にも継承され、中国があらゆる分野で存在を強めたことで、日本内部で拒否反応が起きてきたと主張した。また、現在も、日本では中国についての否定的な言説が支配的であるが、中国そのものへの不信感は政治や歴史認識問題ではなく、しだいに生活そのものに脅威を与える存在として中国が認識されつつあるとした。そして最後の発表者としてソウル大学の金湘培(キム・サンベ)氏は「韓国人の中国観」について発表を行った。21世紀東アジアにおける世界政治はソフトパワー(soft power)や国民国家の変換 (transformation)に注目すべきであるとした上で、こうした文脈から理解される中国の可能性とその限界とは、取りも直さず技術・情報・知識・文化(これらをまとめて「知識」)と「ネットワーク」という21世紀の世界政治における二つのキーワードにいかにうまく適応できるかを基準にしながら評価できるものであると主張した。

 

パネル討論では、SGRA研究員であり北陸大学の李鋼哲(り・こうてつ)氏は、「中国からみた日韓の中国観 」について、対中国認識における日韓両国と国際社会の間の乖離、対日本認識における中韓両国と国際社会の乖離、中国観と現実の中国の間にみられる乖離に触れつつ、「求大同、存小異」の姿勢を力説した。このほかにもパネルやフロアーからたくさんの意見や質問などが寄せられたが、時間の制約上議論は惜しくも懇親会の場に持ち越された。

 

今回のフォーラムは67名の参加者を得て大盛会に終えることができたが、これには同時通訳という「重荷」をボランティアーで快く引き受けてくれたSGRA会員の方々の存在が大きかった。この場を借りて感謝の意を表したい。例年だと、フォーラム終了後は「狂乱」の飲み会に変わってしまうことが多かったが、今年はグローバル金融危機のしわ寄せもあって静かな夜に終わったような感じがする。来年を期待してみたい。

 

*フォーラム当日の写真を下記よりご覧ください。
   足立撮影    フェン撮影

 

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<金 雄熙(キム・ウンヒ)☆ Kim Woonghee>
ソウル大学外交学科卒業。筑波大学大学院国際政治経済学研究科より修士・博士。論文は「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。韓国電子通信研究院を経て、現在、仁荷大学国際通商学部副教授。未来人力研究院とSGRA双方の研究員として日韓アジア未来フォーラムを推進している。
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2009年3月3日配信