SGRAイベントの報告

第11回日韓アジア未来フォーラム「東アジアにおける原子力安全とエネルギー問題」報告(1)

金 雄煕 「第11回日韓アジア未来フォーラムを終えて」

 

2012年2月25日、高麗大学校経営館で「東アジアにおける原子力安全とエネルギー問題」というテーマで第11回日韓アジア未来フォーラムが開催された。昨年3月の福島原発事故後、ほぼ1年が過ぎようとする時点で、「本場」では真正面から取り上げにくいということと、東アジア(協力)という視点も必要という判断から、先ずはソウルで議論してみることになった。 今回のフォーラムの講師の顔ぶれは「大物」が多く、また全く違う立場から原発問題を考えているという特徴があった。

 

基調講演者の金栄枰(キム・ヨンピョン)先生は長年韓国で原子力問題を研究され、原子力政策フォーラム理事長を務める方である。役職からも予想されるように、明らかに原子力の必要性と安全性を強調する「教科書的」な議論を展開した。 これに対し、多彩な経験をお持ちの田尾陽一さんは、「福島再生」という観点から、除染作業など現場での再生努力の一部を紹介した。田尾さんとはフォーラムの一週間ほど前、東京でお会いする機会があったが、その時、孫正義さんを「孫くん」と呼んでいたことと、美味しい「福島産放射能マツタケ」の話に驚いた。田尾さんの議論がちょっと浮いてしまうかもしれないという心配もあったが、とても「新鮮な」議論であり、オーディエンスからの受けもよく、見事に当った結果となった。

 

全鎮浩(チョン・ジンホ)さんは福島原発事故以来、韓国で最も忙しくなった国際政治学者の一人で、中立的観点から東アジアにおける原子力安全協力の重要性を強調した。 最後のスピカーの薬師寺泰蔵先生は「科学技術と国家の勢い」という文明史的観点から「坂の上の雲」としての原発の必要性について力説した。田尾さんとは長いお付き合いのようで酒席などでは議論がよく噛み合うような感じだったが、原子力問題となると、目には見えないものの、相当隔たりがあるような気がした。

 

このフォーラムの創立メンバーの李元徳(イ・ウォンドク)さんの司会で行われたパネル討論では、ウクライナのオリガ・ホメンコさんによる貴重なチェルノブイリ体験談や経済学者の洪鍾豪(ホン・ジョンホ)さんのコンパクトな提案を聞くことができた。時間が限られていたせいか、案外激論もなく閉会した。

 

食事会では、奈良の今西酒造「春鹿」で「一気飲みラブショット乾杯」があったといわれている。しかし、残念なことにその場に遅れて到着したため直接確認することはできなかった。「春鹿」は2009年度の第9回慶州フォーラムで奈良から空輸してきた一升瓶が目の前で割れて消えてしまう大事件があって以来、日韓アジア未来フォーラムの公式乾杯酒となっている。未来人力研究院の李鎮奎(リ・ジンギュ)先生が法事で早く帰られた関係で飲みが足りなかったせいか、場所を変え宿泊先の有名なドイツビール屋でもう一杯をしたあと、第11回フォーラムは終了した。

 

韓国側主催の時にいつも感じることだが、私の予想からしては「満員御礼」に近いレベルの(李先生に動員されたかもしれない)聴衆の数に驚いた。終了まで席を外すことなく真摯に講演や議論を一生懸命聞いてくれた学生諸君にこの場を借りて感謝したい。当たり前のことだが、このフォーラムを形にしてくれた今西さん、石井さん、金キョンテさん、そして忙しいところ参加してくれた韓国SGRAの皆さんにも感謝しなければならない。とくに素敵な食堂に案内してくれた幹事の韓京子(ハン・ギョンジャ)さん、本当にお疲れ様でした。

 

最後にちょっとした心残りと次回フォーラムのご案内。異なる立場からの素晴らしい講演のわりには立ち入った議論に踏み込めなかった限界は残したものの、いつものように、本当に、形式、内容、そして番外の三拍子が揃った素晴らしいフォーラムであったと思う。次回フォーラムは今回のフォーラムのセカンド・ラウンドとして福島でという動きがあるということにご注目!ぜひふるって参加してください。

(仁荷大学国際通商学部教授)

 

当日の写真(金範洙撮影)

 

2012年3月7日配信