パネルディスカッション

グローバル化戦略:持続可能な世界をめざして

テキスト ボックス:


【加藤】 加藤でございます。実はまったく打ち合わせもしておりません。ですから気楽に自由に楽しくやれればと思っております。では、最初に石倉さんのお考えを話しいただいて、その上で議論していきたいと思います。

 

【石倉】 青山学院大学国際政治経済学部の石倉でございます。どうぞよろしく。私が今、興味を持っているのは、グローバル化、企業のグローバル戦略です。特に情報通信がこれだけ進歩する中で新しい企業経営はどういうものなのか、われわれの新しい働き方とはどんなものか、に関心を持っています。業界としては、情報通信やヘルスケアなど、情報技術が非常に重要性を持つ業界を研究しています。国家の役割とか、政府の役割とか、個人の役割とか、企業の役割とか、いろいろお話が出ましたが、私は経営戦略が専門であることもあって、企業の役割がやはり大きいと思っています。

 ここで大きな役割を果たす企業というのは、必ずしも大企業とか、今まであった企業ではなくて、インターネットなどを活用する各種のベンチャーを指しています。先程、留学生の方々のお話にもありままりかかわりなく、新しいアイデアを持った企業がどんどん出てくる、そしてそれが大きな役割を果たす、と思います。

 それでは、グローバル化を進め、持続可能な世界を作る上で、どうやって主要な役割を果たすかというと、その鍵はイノベーションだと思います。それも1回限りのすごいホームランのようなイノベーションより、常により新しいアイデアを出し、新しいやり方を考えていくというイノベーションの意義が大きいと最近は思っています。ブレークスルー的なイノベーションももちろん価値がありますが、イノベーションは続けていくことにこそ重要性があると考えるのです。そして、イノベーションを続けていくためには、切磋琢磨、競争が非常に大事だと思っております。その意味では、世界での競争にさらされている企業が強いのは当然かなと思っています。

 

 先程、グローバル化、ボーダーレス化、情報通信、それからリアルタイムで情報がすぐに波及してしまうという話が出ましたが、それと同時に、地域的に近い所にいる仲間、競争相手、顧客などが重要です。イノベーションには、身近にいる人が重要な役割を果たします。新しいアイデアが生まれた時にその場でちょっと相談できる人がいる、もっとこうしたら良いとはっぱをかけてくれる人がいる、また新しい実験をしたいときに、一緒にやってくれる仲間がいる、というのは非常に重要です。

 これは私の先生でもあるハーバード大学のマイケル・ポーターが最近よく言っているクラスターという考え方です。先程、出たコミュニティの考え方と近いともいえます。クラスター理論では、これだけボーダーレス化が進んだ世の中においても、非常に優れた企業というのは1カ所に集積している。例えばアメリカのシリコンバレーであり、ハリウッドであり、イタリアのファッションなどがそうです。本当は、これだけ情報通信が進めば、世界のどこにいてもそれほど違いがなく、良さそうなものだけれど、やはり周囲から刺激を受け、支援をしてくれる地域に優れた企業が集まっている。このように優れた産業集積であるクラスターを分析すると、世界のどこにあっても、そのクラスターには4つの共通要因がある。その要因とは、業界が必要とする資源や資金など供給サイドの要素条件、その業界をめぐる支援関連業界、その業界自体の競争状況、それにその業界の作り出す製品やサービスを求める需要条件の4つです。この4つの要因がイノベーションを奨励し、それが次ぎからつぎへと新しいものを生んで、クラスターを構成していくわけです。

 多分これは、情報技術では解決できない人脈とか、近くにいることのメリットを示していると思います。

 ここでいう身近な仲間というのは、企業だけに限りません。企業に常にイノベーションをしてもらうように刺激やプレッシャーを与える消費者の役割も、非常に重要になります。例えば、デジタル家電の世界では、日本の業界は多分国際競争力をとりもどすだろうと言われています。日本は、家電一般には比較的強いのですが、それは日本の消費者の要求度が高いからです。「もっと良いものはできないのか?」という需要サイドからの刺激が非常に高いことが、日本の消費者向け電子品の競争力が高い一つの要因なのです。

 私たちは、消費者として、新しいもの、また、例えば環境に優しいものなど、それが少し高くてもそれなりに評価して買う、そしてそのようなイノベーションをしている企業を支援する、さらに良いものを求め、次から次へ、企業がイノベーションを続けるように刺激を与える必要があるわけです。私たち一般の人も、ただイノベーションを待っているだけでは駄目で、積極的に目に見える形でイノベーションを奨励していかないと、これからの世界は良い方向に向かないと思います。

 そういう意味で言いますと、常に今までの行動パターンとか、今までの既得権益にこだわることなく、新しいものでも良いものがあれば、頭から拒否しないで一応使ってみるとか。最初は高いとか、今までのものと違って使いにくいと思っても、その時期を耐えることも必要なのではないかと思います。

 それから先程、お話にあった中で私が幾分懸念しているのは 国籍にこだわることです。特に組織とか、個人とか、企業の場合に、国籍がどこまで重要なのか、個人的にはかなり疑問を持っています。個人も企業も国籍はありますし、国籍はアイデンティティとして非常に重要であることは間違いありません。しかし、国という枠組みだけで考えていると、日本は何ができるのかとか、日本全体でどうなのかとか、そういうことにとらわれてしまいます。 イノベーションは自由で斬新な発想から生まれます。その中で、あまり今までの枠組みにとらわれると、かえってイノベーションは出てこないのではないでしょうか。

 これからのイノベーションは、昔のように簡単な話ではないでしょう。環境とバランスした新しい商品というイノベーションも、従来のイノベーションよりかなり難しくなるでしょう。、どんなアイデアでも、どこからのアイデアでも、どんなことでもやってみるというアプローチをとらないと何も始まらないでしょう。

テキスト ボックス:   その意味では、クラスターのことを申し上げましたが、、クラスターも「国」という枠組みにこだわったものではありません。今までの区分だからといって、国籍にこだわるというのは本当に良いことなのかなと、一つ疑問点として申し上げたいと思います。

 

【加藤】 ありがとうございます。先程、榊原さんと4人の留学生から話をしていただいたわけです。榊原さんからはサイバー・キャピタリズムというもの、それからそこでの情報の重要性、これは今の石倉さんの話と一致するのではないかと思います。だからこそかえって、良い情報ということで、人脈というのは大事なのではないかというような話。それからやはり昔からの意味ではなくて「帝国」という野田さんの言葉を使われましたけれども、ある種の区分けのようなもの、そういう意味でのアジアとしてのアイデンティティというお話がありました。

 その後、金さんからインターネット社会の不平等さというようなこと、そこで日本は情報拠点国家になるべきだという話、あるいはODAで情報教育をというような話もありました。

それからマキトさんからはグローバル・スタンダードの落とし穴ということで、多様性というのが必要なんだ、世界の4分の3を占める途上国のことを考える必要があるというような話。

それから次に高さんから、地球環境の観点から、われわれの基本的なライフスタイルの見直しを考えないといけないというお話がありました。それから最後にウイリアムズさんから、仏教とエコロジーの対話ということで、われわれ自身、日本にいて、日本人は形式的な仏教徒が大部分なわけですけれども、あまり普段、そんなことは考えてないわけですけれども、やはり環境の危機というのは概念、倫理、そういうもの全体の危機なのだという話。それから仏教というせっかく良いものを持っているわけだから、それをちゃんと伝えることが非常に大事なのだという、この最後は非常に大事な点だと思います。そんなお話がありました。

 石倉さんはマーケティングということで、さっきお話しいただいたことと少し違う視点からお話ししていただきました。それで今のクラスターと言うのでしょうかね、あるいはコミュニティと同じようなニュアンスもあるということですけれども。距離が近いところにいることの重要性、これはさっき榊原さんの人脈というのとつながっているのかなと、この辺りから話を始めていただければと思いますが、榊原さん、いかがでしょう。

 

【榊原】 先程、申し上げましたように、こういう情報社会になると、スタンダードな情報というのはだれでも、どこにいても取れるということになりますから、質の高い情報をどうやって得ることができるかというのが、最も重要なポイントになってくるわけです。ですから今、石倉さんが言われたように、クラスターというような形で、その分野の専門家が集まって、それでお互いに情報交換するというのは非常に有効ですし、また物理的に集まらなくても、そういう人たちのネットワークが出来ていれば、これはインターネットでも、ファクスでも、Eメールでも何でもつなげるわけですから、そういうもののネットワークが重要だと、そういうことではないかと思います。

 ただ、例えば国際金融の世界でも、電話とか何かでやっていても、時々集まって、一緒に何か物理的な接触と言うとおかしいけれど、一緒に同じ所にいて、飯を食ったり何かするということがどうしても必要になりますから、今おっしゃったクラスターという概念と似たような部分ですけれども、そういうネットワークをどう作ることが非常に重要になってくると思います。その際に、国籍というものはあまり重要視しないと思う。例えば日本の企業には日本人が多すぎるということで、もっとマルチナショナルにならなければいけないというのは、非常に明快ですね。

 ただ、私が一言だけ言いたいのは、やはり日本人が日本の文化を知って、日本の歴史を、このごろ日本の文化も、日本の歴史も知らない日本人が増えてきましたけれども、そういうものを知っていて、そういう観点から物事を見られるというのは、これは明らかなコンプラティブ・アドバンテージです。ですから日本人であることを捨ててはいけないし、むしろ日本人であることを最大に生かしながら、イントラ・カルチャーと言うんですか、インターカルチュアル・ファーティグゼーションみたいなことをやっていくということが非常に大事です。これだけグローバルで、情報社会になればなるほど、日本人であるということ、日本人であるということはただ日本で生まれたという意味じゃありません。日本の文化を知っているとか、日本の歴史というものを深く理解しているとか、日本の伝統というものを非常によく分かっているとか、そういうことの持つ価値というのは実は上がってくるのです。

 だからそこのところを理解しておかないと、薄っぺらなインターナショナリズムというのは、これは最悪でございまして、ただ英語がしゃべれてもしょうがないわけです。そこら辺の理解をやはり深める、石倉さんのおっしゃっていることとあまり変わらないと思うんですけれども、やはり国籍は大事じゃないけれども、カルチュアルなアイデンティティを持っているということは非常に大事だというような感じがいたします。

 

【加藤】 ありがとうございます。情報というのはおそらく、インターネット時代になる前から、世界にあるものはあるわけですね。インターネット時代になってくると、1人がアクセスできる量が増えているというだけで、結局、それは逆に言えば、みんなが同じ情報を山ほど持っているというだけのことかも分からないですね。そういう意味でクラスターとか、コミュニティとか、今の榊原さんのようなお話になるのかなと考えたりしています。

 さっきマキトさんから多様性という言葉が出ました。それからウイリアムズさんから日本の宝物をちゃんと伝えることというお話が出ましたけれども、マキトさん、それからウイリアムズさん、どうですか。

 

【マキト】 先程は革新、イノベーションという言葉が出ましたけれど、どの分野でもこれからすごく画期的、カギになるような役割を果たすと思います。私が理解している限りでは、あくまでも素人の見方ですが、革新というのは二つのカテゴリーに分けられると思います。一つはプロセス、あるいはプロセス・革新という分野ですけれども、そこでいかに基礎研究から出したアイデアを商品化する革新だと思いますけれどね。もう一つは、いかにもともとの基礎研究の新しいアイデアを出すというのが、基礎研究の成果と思いますけれど、そこにも革新が必要だと私は理解しています。

 どちらかと言うと、私が理解している限りでは、日本はある基礎研究から出たものを、それを商品化するには非常に強いと思っています。具体的な例を取り上げますと、例えばトランジスターという概念はアメリカから生まれて、それを普通の消費者が、われわれが使えるような商品にしてくれたのは日本の企業ですね。つまりソニーが世界で最初のトランジスターラジオを作り、みんなが楽しく野球を聞かせていただくようになりました。それは昔の例だけではなくて、今でも例えば、LCD(液晶ディスプレー)、コンピューターで最近よく見られる画面なんですけれども、それはまたヨーロッパの発明で、概念的ですね。ヨーロッパの発明で、そしてそれをテレビに、あるいはコンピューター画面に導入できたのはまた日本の企業なのですけれど、多分、石倉先生がおっしゃっている革新はもっとベーシックな、基礎研究から生み出しているアイデア、新しいアイデアということをご指摘していらっしゃると思います。それだったら私も同感です。やはり日本はこれから、そういう普遍的な知識に基づく知識も身に付けている、あるいは発想できるような人材を育成しないテキスト ボックス:  といけないと私も思っています。

 

【加藤】 ウイリアムズさんの前に、石倉さん、今、マキトさんの話に対して。

 

【石倉】 イノベーションには、プロセスの革新とまったく新しいブレークスルーの2種類があるということですが、それは先程、日本のアイデンティティは何か、どうやって日本の強みをいかすか、ということに関連してくると思います。私が最近心配しているのは、日本には強いところがあるのに、それを新しい時代にあって、ちゃんと生かしているかいささか疑問がある、ということです。昔強かったという力を、枠組みを変えて見直し、今後も強く有効なものを探さなくてはならないのです。日本には明らかに強い点があって、ユニークな特色もあるのですが、後ろ向きにばかり考えて、昔は良かった、昔に戻りたいと考えていても仕方がないのです。これからの力として、日本のアイデンティティ、あるいは日本企業のアイデンティティをどう考えるかということが重要だと思います。

 例えば、商品化に非常に強いと言うのであれば、それをどういかすか、を新しい情報化の時代に合わせて考えれば良いわけです。これだけ多種の情報がアクセスできる世の中では、新しいアイデアを得る方法は、いろいろあります。それを活用した上で、自分たちの強みを生かすというやり方をしたらいいと思います。

 しかし、日本企業は、商品化の力は強かったが新しいアイデアは駄目だった、これからは、新しいアイデアが大切で、商品化はもう全然意味がない、というような議論にとかくなりがちです。 私は、実はそうではないと思います。

 商品化という強みを生かした上で、新しいアイデアを創り出せるような土壌を作る準備をしておく。しかしこれには時間がかかりますから、当面は、どこかから新しいアイデアを持ってきて、商品化のプロセスに強いという日本企業の力を生かすというやり方があると思います。

 日本では製造業が強いということをよく言われます。「日本の製造業が復活するためには」ということをテーマに話をしてくださいと、最近よく頼まれるのですけど、私は、テーマから「製造業」を取ってしまいます。先ほどの「国籍」と同じで、「製造業の復活」というと、製造業という枠組みでしか世界が見られない、製造業が強かった昔に戻りたいという議論になってしまいがちなのです。いくら昔が良くても、時間を戻すという議論は、先程、榊原さんがおっしゃっていた様に、情報通信がこれだけ進んでいる中では、建設的とはいえません。新しい世界の中で、日本企業の持つ製造業の強みをどうやって生かしていくかという、次のステップに行かなければいけないと思います。とかく「昔は良かったね」、「ああいう時代に戻りたい」という後ろ向きの話になってしまう。それが気になります。日本企業の強みは厳然とあると思いますが、それを新しい時代にどう生かしていくかという新しい切り口が必要だと思います。

 これを実際に企業でやろうと思うと、結構、難しいです、各企業の特色をちゃんと見極めた上で本当には何が強いのかを洗い出して、個別具体的にやらなければならないのです。それはかなり難しい作業ではありますが、その作業をやらずに「昔は良かったですね」「昔に戻りたい」という議論をしていても、世の中の動きとは逆行すると思います。

 

【加藤】 ありがとうございました。今の石倉さんは、イノベーションにおいてアイデンティティは大事だけれども、昔に戻ると言っても仕方がないと、こうおっしゃったわけですね。このことはこのグローバライゼーション全体の話に関して、常に出てくる話だと思います。

 一方で例えば企業の方とお話をする。これは割合、単純に「いやグローバル・スタンダードがどうだ」って話をしたり、「おれたちはやはり商売が大切だから、早く何とかしないといけない」、そういう話になるわけですね。一方で、さっき留学生の話の中にもありましたように、だけど多様性が大事だとか、あるいは地球環境問題の面からもう限界が来ているのではないかという。こういう人たちは、もっともっと長期的な話でもあるし、あるいは産業や目の前の経済、商売とちょっと離れたところの議論が多いものですから、どうしても昔に学ぼうという話が多い。

 しかし、まあ昔々と言ってもなかなかしょうがないという石倉さんの話もまったくその通りであって、それで最後にここは難しいという話をしちゃって、まさに難しいんですね。これはおそらく一番難しいのですけれども、その難しいところを、お話をしていただきたいな。さっき、途中になりましたから、ウイリアムズさんからお願いします。難しいけれども、これをやればいいじゃないかと。(笑)

 

【ウイリアムズ】 産業と企業から一番離れたのは私みたいな仏教学者です。(笑)初めに宝物を伝えるというように話していましたけれど、私にとっては、外から日本を見つめるときに、一番、日本ですごいなと思うのは、日本産業とか企業よりも、お寺とか、歩くこととか、日本の温泉です。日本の温泉とか、お米とか酒とか、そういうのが一番魅力的な宝物ではないかと思ってしまうんです。だからちょっと話がつながらないんですけれど。(笑)

 

【加藤】 宝物の話が出ましたけれども、高さん。

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【高】 先生方は、日本の企業がどうやっていくべきかということを話していらっしゃいますが、私は、環境から見ています。やはり反対の立場をとらないと、ここのパネラーにならないと思いまして。私の話は夢物語になってしまうかもしれないですが。製造業復興も一つの日本の大きな課題ですけれども、元に戻ることはなかなか難しい。ただ一つ、ちょっと考えていただきたい。「今、みんな幸せですか」と日本のサラリーマンに聞きたいです。当然、不況でローンが返せなくなって、それが大変ですね。会社がしてくれないという。あるいは国がしてくれないという。その前に、実際、バブルの前に、あるいはローンを借りる前に、自分が何でそんな無理をして借りるかと聞いたほうが良いのではないでしょうか。もちろん私、個人の責任を責めたくないわけですね。それはやはり社会の潮流でもありますから。皆さんが買っているわけですね。ですから大量消費というライフスタイルが生まれる。社会が個人に、あるいは失礼な話でいうと、国がそのGNPをもっと上げようと、どんどん仕掛けていく。中国は今やろうとしているわけですね。でも中国の場合はやはり老後は保証制度が少ないから、10%から2%まで金利が下がっても貯金するんですね。老後だけ。

 ちょっと変な話をしますけれども、2人のおばあさんがいまして、1人はアメリカのおばあさん、もう1人は中国のおばあさん。同じ日に亡くなりました。それで天国で神様に会いまして、アメリカの方が「私はやっと昨日でローンが全部返せました。このマンションにずっと住んでいました」。中国のおばあさんは「私はやっと昨日家を買いました。マイホームを買ったとたんに死んでしまいました」。東洋は発想が根本から違うんですよ。その中国のおばあさんは、多分、アメリカのおばあさんと同じくらい幸せと思っているわけです。さっきの多様化ということがありましたが、いろいろな価値観がありまして、いろいろで良いのではないかと私は思います。

 ただ地球環境は、皆さん共有のグローバルなものでありますので、国益よりも地球益、これはまだ夢物語ですけれども、こういう点から転換しないと逆に国は残らないのではないかと、私は思います。

 

【加藤】 「あなたは今、幸せですか」なかなか、これは大変な質問ですけれども。

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【榊原】 話が大分拡散しましたけれども、少しまとめる方向で、私は大蔵省を辞めて、非常に幸せでございますけれども。(笑)二つぐらいトピックスがあると思います。一つは日本の企業がどうあるべきかという問題の立て方をするのは、おそらく間違いだろうという気がいたします。もう日本の企業とか、アメリカの企業とか、フランスの企業とか、そういう概念は捨てたほうが良い。企業は企業だと、たまたま日本人が多いとか、たまたまアメリカ人が多いとか、たまたまフランス人が多いと。世界の今のインターナショナル・コンペティションの状況というのは、そういう状況になっていますね。ですからフランスのルノーと日本の日産が一緒になるとかいう、自動車産業でいったいどこの国の自動車会社というような概念はなくなってくると思います。

 例えばトヨタが本当にグローバルに強い自動車会社なら、日本というアイデンティティは恐らくなくなるし、なくならなければならないということが一方であると思います。ですから、日本人がどうしても日本の企業とか、日本の国とか、常にそういう発想で物を考えるということ自体をも、ラジカルに変えていかなければならないという気がいたします。

 そういった一方で、私は相変わらず日本文化が大事だと、こう言いたいわけです。そういう企業の中で新しいイノベーションをしていくときに、一番われわれにとって有利な状況というのは、われわれが日本文化を知っており、日本の伝統というのを身に付けているということだと思います。これはもうソフトの社会では昔から認識されていることで、ファッションの世界とか、料理の世界とか、そういうところにいる人たちは、日本人であること、日本人が持っている感性、そういうものを使ってグローバルに展開しているわけです。個人が持っている文化的アイデンティティは捨ててはいけないけれども、日本の高度成長の中で非常に成功裡に展開してきた企業も、日本の企業であるというアイデンティティは捨てるべき時期に来ている、それをやらないと日本の企業は外国の企業にやられると、それだけの話です。私はそういうことで日本の企業を守る気は全くありません。外国の銀行なり、外国の証券会社が日本の銀行を倒すようになれば倒しても良いと、そこで日本人のアイデンティティを持った、日本の文化なり、日本の伝統なりを身に付けた人がそこで立派な仕事をしていけば良いと、そういうことでありますから、その辺の発想の転換が非常に必要だなという気が一ついたします。

 それからもう一つ、環境問題について言えば、これは要するに、ここ200年の西欧近代の終わりということだと思います。産業革命に始まった、一つの西欧近代が終わりの時期に入ってきている。ですから先程の私の話につなげて言いますと、産業革命以来の200年の展開が、一つ終わりに来て、新たな展開が始まりだした。その中で非常に重要なイシューは環境という問題であって、環境に対してやさしい社会をどう作るのか。情報化の進展の中で、それがどういう形で情報と環境がインターアクトしていくのか。それをうまくインターアクトさせることによって、企業のイノベーションも生まれてくる。そんな社会に恐らくなってくるだろうと思います。ですから、このままいけば環境問題から、恐らく二、三十年のうちに、このグローバル・キャピタリズムは崩壊しますし、それから情報化という面から言っても、今のような荒々しい情報化のままでいった場合には、恐らく二、三十年で、このグローバル・キャピタリズムは崩壊します。中長期的に見れば、あるいは若干、哲学的、宗教的に考えれば、崩壊を一度したほうがいいという考え方もあるかもしれませんけれども。まあ、今の私の立場からするとあまり崩壊してもらっては、まずいのではないかなというような気がいたします。

 ポストモダンとよく言いますけれども、西欧近代が終わりに来たということははっきり認識しなければいけない。それを逆に言うと、やはり日本的なエトスというか、先程、仏教の話がありましたけれど、仏教からわれわれが学んだものとか、そういう東洋的、あるいは日本的、そういうものの考え方がこれからの展開の中で大きなプラスになっていく、そういう側面を含んでいると思いますね。われわれがむしろ西欧に対して発信していかなければならない時期に来ている。われわれ、これは日本だけではなくて、中国とか、東南アジアとか、インドとか、そういうものを含めて考えて、われわれが発信できるものがある。ポストモダン、あるいは西欧近代の後をレジットメットな形で受け継いでいくのは、やはりわれわれが持っている伝統、アジアの文化、そういうものではないかということです。いろいろあった議論、何とかつなげてみようと思って努力いたしましたが、うまくつながったでしょうか。

 

【加藤】 ありがとうございます。榊原さんにバトンタッチしたほうがいいかも分かりません。今、榊原さんの話の中でも、情報発信していくというお話がありましたけれども、金さん、いかがですか。

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【金】 榊原先生の話のフォローになるかどうかは分かりませんが、デジタル・エコノミーという言葉があります。デジタル化された情報が非常に重要であるということだと思いますけれども、日本のグローバル化を推進する上で、日本から外に出る、日本が外に出す情報、それもデジタル情報が非常に重要であるというのは、皆さまの意見が一致するところであると思います。それが商品化とつながってもいいし、つながらなくてもいいわけですけれども、先程、お寺の話ですとか、温泉の話ですとか、日本の文化の話ですとか、日本のにおいがするもの、そういったものをまずデジタル化する。そういったデジタル化された情報ないしコンテンツを世界に出す。その世界に出されたコンテンツ情報をめぐって仮想のコミュニティが形成される。そこでこれまでの日本の文化や伝統が染み込んだ日本のイメージ・メーキングができる。そういった作業というのは非常に大事ではないかと、私は考えております。

テキスト ボックス:   若干違う話になりますけれども、インターネット・ビジネスの話ですが、非常に小さい企業ですとか、多様な主体に機会を与えるというふうなことは間違いないと思います。それはほかでもなく、今まで以上に弱肉強食の世界に入ったということを意味するものではないかと、私は考えています。特にインターネットの世界に入ると、先発者優位の法則と言うんですか、マイクロソフトはそうですし、アマゾンがそうですけれども、まず早いものが勝ち、始めたものが市場を独占して、ほかの後発者は入ってこないようにすると、そういう怖い法則が働くわけです。そういったことを考えた上で、企業の戦略なり、経営戦略なりを立てないと、ちょっと付いていけないのではないかという気がいたします。

 また、インターネットやグローバル化がらみの話では、効率性の観点から離れて、規範的な側面を考えた場合に、国家の役割は依然としてあるのではないかと私は考えています。身近な話として、ポルノ関連の情報がインターネットの中で5割以上を占めているという報告があります。そういった情報を国家は、法的に、制度的にどういうふうに対処するかというのも非常に大きな意味があると思います。アメリカのインターネットポルノ産業は世界のあちこちからのアクセスによって、ものすごい利益を上げているわけです。そういった利益との関連もありますが、とりあえずポルノの規制関連とか、著作権ですとか、そういったものに対する国家の役割は依然として重要であると思います。

さらに、国家の役割については、国民がインターネットという媒体を活用できるように、国家が積極的な政策をとるべきだと思います。まず小学校の教育から始めて、みんなが気軽に使えるようにすることとか、料金の問題ですとか、常時接続の問題ですとか、政府が取り組むべき対象は多いと考えています。

 

【加藤】 ありがとうございます。早い者勝ちの経済と、それからやはり国家の役割というのは大きいのではないかという話ですが、国家の役割のほうは後で榊原さんにもう一度お話を伺いたいと思いますが、早い者勝ちの経済について、石倉さん、いかがでしょう。

 

【石倉】 ネットワークをベースにした業界は大体、早い者勝ちになってきています。例えば、データをどれだけ早くから集めるかの勝負になります。データベースはたくさん蓄積した方が勝ちです。amazon.comもそうですけれども、amazon.comが持っている顧客のデータというのは非常に膨大で、後から誰かが出てきても、とてもそれに対抗できません。Amazonも、ここまで来ると、ブランド力も、それからそれに付随して信用力も圧倒的なものを持つという状況になっているのです。

 以前は、いろんな人が失敗した後で一番良さそうな戦略を探して、後から、その戦略で業界を制覇するという方法が有効だった時代もありますが、ネットワークをベースにした業界の場合は、顧客ベースをいかにはやく作るか、顧客のデータベースを先に作るかが、非常に強力な競争優位性になります。そうなると、先に入った方が強いということになりますので、この傾向は多分、これからも続くと思います。

 こうなると、企業戦略も考え方を変えなくてはなりません。完璧なものを、時間をかけてもいいから作るというよりは、先に早く製品やサービスを出して、それでお客さんをつなぎ止めていく。企業の立場としては、やりながら力を付けるという方法が重要になってくるわけです。ですからあまり完璧に100%正しいものを作ろうというよりは、早くやるというスピードとか時間の観念が重要になってきます。

 一方、先程情報発信のところでも出ましたけれども、消費者の立場から言うと、たくさんある中でどうやって良いものを見出だすかということの重要性が増すのです。消費者の責任が大きくなってくるのだと思います。情報はいくらでもある。しかし、スクリーン上に出てくる情報と実際はかなり違います。そこで、どれだけ違う可能性があるのかを、個人個人が自分で認識しなくてはならない。ひとつでなく、いろいろな情報源から情報をとるとか、必ず裏をとるとか、自己防衛的なことをやらないと、難しいだろうと思います。そうでないと、非常に恐ろしいことが起こる可能性があります。

 ですから、情報を発信することも、もちろん必要ですけれども、情報を判断するとか、分析するとか、本当に正しいのかどうなのか考えるという力も、消費者としては、非常に重要になります。個人がかなり重要な役割を果たす。個人の責任でいろんなことをやらなければならない社会になると言えると思います。

 

【加藤】 ありがとうございます。じゃさっきの国家の役割について、榊原さんに伺いたいと思うんですが、今の石倉さんのお話というのは、要するに個人が賢くないといけないというので、そんなにみんな賢くなれるかなという感じもするんですね。一つのことに賢くても、そんなに何でもに関して賢くというのは、ほとんどの人はなれないわけですから、そういう意味ではやはり、そこは国家の役割なのかどうなのか分かりませんけれども、そういうことも含めてお願いします。

 

【榊原】 国家の役割の前に先行メリットということについて、若干、コメントいたしますと、今、石倉さんの言われたとおりで、そういう状況が加速するわけですね。そういう状況が加速するときに、日本の企業というのは非常に不利ですね。今の日本の企業、役所を含めて、日本の大組織の状況というのは、いろんなアイデアが出てきたとき、それをたたくことに有能な人は山ほどいるんですけれども、走りながら考えていく、しかもリアルタイムでリアクトしていく、そういう人材が非常に少ないですね。そういう人は大体、組織で偉くなってないわけでございまして、そこのところを大きく変えていかないと、この情報化社会に日本は付いていけないですね。

 若干、不正確なものでも、最初に出てしまうということです。僕はよく国際会議でそういう場面に遭いますけれども、何か言われたときに、若干、不正確でもドーンと1回言っておくと、それで相手が引っ込んでしまうというところがありますから。そういう80%とか85%でも、ともかくやってしまうのだと、走ってしまうのだという、そういう発想になっていかないと。大体、皆さん、98%か99%正しいということしかやりませんから、間違ったことを平気でやる人間を育てていくということが、場合によると間違っていないかもしれないということですね(笑)。平気である人間を育てていくということが非常に重要だと思います。

 それから、加藤さんの言われた個人はそんなに賢くないってことですが、個人はそこそこ賢いです。そこそこ賢いですけれども、いろんなことの選択が全部、個人に来るというのは、これは無理ですね。無理ですから、やはりどういうネットワークを作って、個人を保護するのかということが、国なりコミュニティなり、そういうものの役割になってくると思います。

 アトミスティックな個人に社会を還元して、そこの責任だっていうのは、ちょっとそれは気の毒です。私は金融の世界にいますけれども、金融のことも個人で、国際企業のことも個人で理解しなさいと言っても、それは無理ですね。ああいう専門的な世界のことを少しだけ勉強して分かるわけありませんから。そうなってくると何かインフラストラクチャーが必要だ。それはルールであり、規制であり、それは国家の役割か、地方自治体の役割か、そういうものになってくるだろうと思います。

 ただ問題はこれだけの情報化社会になってきたとき、さっきのポルノの話にもありますけれども、これは国だけではできないんですね。必ず国家が規制すれば、何かそれを回避する手段が出てきます。例えば金融の世界で言えばオフショア・マーケットという規制のないマーケットがあって、そこを活動の拠点にして、規制を逃れるということがありますから、私はポルノの世界のことはあまり知りませんけれども、同じような規制回避の流れ方が、恐らくあるんだろうと思います。ですからグローバルになったときに、当局というか、政府のほうもグローバルにこれに対応しないと、結局、有効なルールができないですね。国際金融の世界の問題はそこでございまして、そこがなかなかやはり実際問題としてできない。つまり情報化あるいはグローバル化のほうが先に進んでしまって、それに対抗するというか、それを制御する、モニターするメカニズムというのは出来ていないわけですね。そのメカニズムをやはり早急に作らないと、さっきの私の話に戻りますけれども、まずシステムが崩壊するということが先に起こるでしょう。逆に言うと、システムが崩壊しないとそういうものができないのかもしれません。中央銀行制度がきちっと出来てきたのは大恐慌の後ですから。大恐慌の教訓で中央銀行で貨幣をコントロールするようなことが出来たので、やはり情報をコントロールするというのはサイバー資本主義が崩壊した後じゃないと出来ないかもしれません(笑)。

 しかし、崩壊する前に出来るだけインターナショナルなネットワークでそういうものをやっていくべきです。恐らくこれは政府だけじゃなくて、NGOとか、いろんな形でインターナショナルに活動する人たちが協調しないとやっていけない。そういう問題だろうと思います。ネーション・ステートという19世紀、20世紀の国家というのは崩れつつあるわけですから、そうなってくるとどういう形で国家を超えたルールを作っていくのかということが、これは政府なり、そういうところにいる人たちにとって非常に大きなチャレンジだと思います。非常に難しいと私は思います。難しいけれども、それはやっていかなければならないことじゃないか。

 それから、インターネットの規制なんかやりますと、個人の自由とか、言論の自由とか、そういうことと絡んできますから、それに対して、どういう回答を用意するのかというのも非常に難しい問題ではないかと思います。

 

【加藤】 先程、石倉さんからも大変難しい、今、榊原さんからも大変難しい、なかなか難しいのはもともと分かっている話ではあるのでしょうけれど。

 時間が迫っていますが、もしご質問なり、一言、これを言っておきたいという方がいらっしゃいましたら。恐縮ですけれども、1分ぐらいでお願いします。

 

【木内】 木内と申します。私、初めて出席させていただいて、本当に国際交流を体験いたしました。この4人の外国からいらしてらっしゃる方が難しい日本語を駆使なさって、こんな立派な発表をなさったのは素晴らしいと思います。

 私、外国に夫の仕事の関係であちこち行っていたのでございますけれども、留学生の方に、伺いたいと思っていたことがあります。タイに十数年前におりました時、留学生の皆さんとお話をする機会があり、日本に留学していても、学校と4畳半の小さなアパートや寄宿舎の間をただ通うだけで、日本人のお家にも行ったこともないし、交流もあまりなかったとい方が多かったのです。先程、中曽根先生のお話で1983年には1万人だったのが、今、5万人と伺いました。今、日本にいらしていて、日本人のお家にいらしたり、交流があって、「ああ、良い気持ちだった」、日本人の本当の友だちが出来たというような方が、この5万人の中にたくさんいらっしゃるでしょうか。国際交流というのは、結局、1人1人の交流でもって、「ああ、素晴らしい国だった」ということで、良い関係が生まれると思うんですね。何十年も前に慶應に行っていたというタイの大蔵大臣がそういう話をしてらした時に、私は今、日本にいらっしゃる留学生がそういう交流があるのかどうか、日本人には随分呼んでいただいているのかどうか、それを伺いたかったんです。

 

【加藤】 今のご質問に対して、4人の方を含めて会場の留学生の皆さん、後のレセプションで「いや、実は満足している」とか「してない」とか、お話していただければと思いますので、私から代わってお願いをしておきます。

もうほとんど時間がないですけれども、結局、グローバルになればなるほど、ローカルなところをちゃんと押さえてないといけない。ローカルなところというのは、結局、「おれは何なんだ」「おれは何をするのか」という、そういう意味での、さっきからアイデンティティという言葉が出ていますけれども、それをきちっと教えて実行することなのかなと、私は思ったりしております。あと、これだけはちょっと言っておきたいということがあれば。

 

【ウイリアムズ】 じゃ、最後にジョークで終わりたいと思います。

 

テキスト ボックス:  【加藤】 最後を締めてください。

 

【ウイリアムズ】 私の友だちのドイツ人ですが、赤い髪をして、日本で留学生をしています。やはり外国人が日本で勉強すると、みんな「ああ、外人だ、外人だ」というような経験が多いと思いますが、彼女が近所の銭湯に行くんです。やはり留学生はお金がないから、自分の家にお風呂がなく、銭湯に行く。それが日本人との出会う一つの場所であるわけですけれど。そこでやはりおばあちゃんたちが多くて、赤い髪をしているので、ジロジロ、毎回、見られているんです。見られることに慣れるまでは時間がかかりまして、怒っていたんですね。そこで、日本語を勉強して、日本語のセンテンスを一つ何か言ってやろうと思って、そのおばあちゃんたちに「私もニンジンです」と言いました。(笑)「私もニンゲンです」というのをニンジンと言いまして、そしてもちろんニンジンというのはオレンジの色なので、もう爆笑になってしまいまして、その銭湯には通えなくなったんですが(笑)。こういうことを通じて、何とか日本で、銭湯とかで、こういうことに慣れたり、楽しい変な経験もあったりして、留学生は暮らしています。

 

テキスト ボックス:  【加藤】 時間が来ましたので、この辺で終わりたいと思います。最後は銭湯の話で締めていただきました。まあやはり、それもアイデンティティだろうと思います。ありがとうございました。(拍手)

 

【佐藤】 加藤さん、パネラーの皆さん、どうもありがとうございました。すみません、時間が足りなくて未消化の部分は、この後、レセプションのときにパネラーの先生とか、留学生の方々とどうぞ直接、お話しいただければと思います。

 本日は渥美国際交流奨学財団設立5周年記念シンポジウム「グローバル化戦略:持続可能な世界をめざして」ということで、皆さんと一緒に勉強させていただきました。グローバル化を今日の私たちほど、いろいろな方向から考えた人はいないのではないかというぐらい、環境とか、経済とか、宗教、教育、国家の役割とか、いろんな方向から考えたと思います。どうせ押し寄せてくるグローバル化ですけれども、これをボーッとして迎えるか、またはちゃんと戦略を持って迎えるかによって、大きく何か将来が違うような、そういうことを私は実感しました。

 これをもちまして、本日のシンポジウムを終了いたします。皆さま、ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 


 

プロフィール

 

●加藤秀樹(かとう・ひでき)

構想日本代表・慶應義塾大学総合政策学部教授

京都大学経済学部卒。大蔵省証券局投資管理室長、財政金融研究所研究部長、大蔵官房企画官を経て、1996年退官。同時に政策立案シンクタンク「構想日本」設立。1997年より慶應義塾大学教授。渥美財団評議員。

 

●石倉洋子(いしくら・ようこ)

青山学院大学国際政治経済学部教授

上智大学外国語学部卒。バージニア大学経営学修士。ハーバード大学経営学博士。マッキンゼー&カンパニー勤務の後、1992年より現職。バージニア大学ビジネススクール客員教授、行革規制改革委員など。渥美財団理事・選考委員。

 

●佐藤直子(さとう・なおこ)

ナオコ・カンパニー代表

学習院女子中高等科卒。ヒューストン大学留学(ジャーナリズム専攻)。高校時代からテニスプレーヤーとして活躍。オーストラリアン・オープン、ベスト8。ウィンブルトン出場17回。テニスだけでなく、講演、執筆、テレビ・ラジオ出演などコメンテーターとして幅広く活躍中。渥美財団理事。

 

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