新しい言語学習法の開発を目指して

ヤン  ジェチー
楊 接期
出身国:台湾

在籍大学:東京工業大学大学院社会理工学研究科
博士論文テーマ:インターネット上で実行可能な科学技術日本語論文支援システムの開発と評価

 

  日本へ留学することを決めたのが、今から8年位前でした。当時、日本への留学を決意し、それに向かう準備を始めました。そして日本の文部省奨学生試験(国費留学生選別試験)に無事に合格し、日本への留学が決まった喜びは、今でもはっきりと覚えています。

  日本へ留学したいきっかけは、二つありました。一つは既に日本語を勉強していたことで、もう一つは研究の目的のためでした。以下それについて説明します。

  大学に入ってから、日本語を第二外国語として勉強していました。日本語は中国語と文法上ではかなり異なっていますが、漢字が使われるため中国語の母語話者にとって、非常に親しい言語の一つと言えます。私も、その魅力にとりつかれていて、日本語の勉強に励んでいました。勉強の手段については、テキストやカセットテープはもちろんのこと、ケーブルテレビに日本語のチャンネルがいくつかあるので、それをも勉強の一部として取り入れていました。さらに、留学を決意したときから日本の新聞やニュースをできるだけ見るようにし、身近な話題に関する日本語を身につける努力をしていました。

  当時、大学の人工知能の授業で、コンピュータ上で人間の言語を処理する「自然言語処理」の分野を初めて知りました。私はプログラミング言語のいくつかに携わってきました。人間の使っている言語そのものをコンピュータ上で処理できることに感動し、非常に興味を抱きました。将来、これについて研究しようと思った瞬間でした。そのとき、何について研究するかはまだ具体的にはっきりしていませんでした。自分が日本語を勉強している経験から、その日本語学習の難しさを乗り越えるために何か助けるものはないか、何か役立つものはないか、そのような支援するツールがあればいいなあ、とつくづく考えました。そこで、「自然言語処理を用いた言語学習支援システムの開発」に関する研究の構想が生まれました。日本語を第二言語として勉強している私としては、日本語の処理を研究の対象にしていくことを構想してみました。これらの理由で、日本への留学の動機がさらに自分の中で強くなりました。

  現在私の研究は、自然言語処理の最新技術を用いてインターネット上で実行可能な日本語学習支援システムの開発を行っています。日本語学習者に少しでも役に立つ学習環境の構築は、今後、引き続き研究していく課題です。

  このように、留学を決意したときから、それに向かう計画を立てて、準備を進めました。計画は大きく分けて、三つがありました。

  まずは、日本語に関しては、日本での研究生活、日常生活に困らない程度の日本語能力を身につけたいという目標を設定しました。そして、様々なメディア(テープ、CD、ラジオ、テレビ、新聞、映画、パソコン)を使って、より多くの情報を得る努力をしました。次は、家族の経済状況を考慮し、なるべく両親に負担をかけないように、文部省の試験を受けることにしました。そして、研究に関する専門知識をできるだけ増やすことにしました。特に、勉強したい科目は学際的な分野なので、より多くの知識を吸収することが大切だと思いました。

  私にとって、留学の意義は、ただ留学だけが目的で満足するのではなく、日本に留学できたことを重要視して、いかに日本において自分の研究を確立していくかということです。さらに、いかに自分の能力を伸ばし目標に向かって努力するか、ということが本当に大切ではないかと考えています。「人生にチャンスはいっぱいあるが、同じチャンスに2度出会う可能性がない」と私はいつも思い、自分の選択には前向きに、そして絶対に後悔しません。